総合職の採用系統 -どの系統のキャリアが有利か?-

前回の記事では、JR各社で生きていくうえでどのキャリアプランが良いかについて書いてみた。

簡単に言えば、出世がしやすい(社内で力を持ちやすい)系統は、 事務系>輸送系>開発系>施設・電気系 の順である。

役職などは各系統内で人事が行われるので、別に出世に大きな差がつくわけではないが、所々で系統間の力関係は見えてくるのだ。

輸送系は「安全の最後の砦」という御旗のもとに、他の系統に色々と要求することが出来るし、事務系は労組とのパイプという強いカードを持っている。

こんな社内事情をほとんどの就活生は知るわけもないのだが、いざ就活が始まってみると大体上の順番の倍率となる。なんとなく華がある、というのは外から見ても感じられるのだろう。

ただ、鉄道会社という枠を超えてキャリアを形成する場合は、また違う展開になる。今回は会社内ではなく、「市場価値」を見据えたキャリア形成について書いてみよう。

それぞれの系統で身につくスキルは何か?

4つの系統それぞれにおいて、どんなスキルが身につくかを見てみよう。もちろん在籍年数などで変わってくるが、大まかに言えば間違ってはいないと思う。

これらのスキルが、あなたの鉄道会社以外での「市場価値」の一部になってくるだろう。(もちろんポテンシャルという側面もあるため一側面でしかないが)

①事務系

この系統で身につくスキルは、財務や経理、法務、人事労務等、会社のバックエンド的な物が多い。必要に応じて、会社から補助を受けて簿記や英語などの資格取得も可能だ。

これらのスキルは鉄道会社だから身につく特殊なものではなく、別にわざわざ鉄道会社に就職しなくてもよい。せっかく鉄道会社に就職したのだから、鉄道らしいことをしたいと思っても、中々できないのが現実だ。(もちろん、労組対応は鉄道会社ならではの仕事かもしれないが。。。)

こうして書いてみると比較的地味なスキルばかりであるが、逆に言えばどんな会社でも必要となる大事なスキルだ。

意外としっかりと企業財務や人事労務が出来る人材は少なく、鉄道会社という大企業ではちゃんと教育されており、市場からの信頼性も高いだろう。

地味なように見えて、意外とベンチャーのCFOやHRなどへの道も開かれている。ベンチャーはビジネスは出来るが、ある程度の規模になってくると、こういったバックエンドの仕事がかなり重要になってくるのだ。

最も潰しが効くので、いざとなれば鉄道会社以外の道も広いのが事務系統だろう。頑張れば、自分の市場価値を高めることもできる良い系統だろう。

②輸送系

ここで身につくスキルは、鉄道のオペレーションに関するスキルだ。大きく言えば、運転士や車掌などの乗務員の育成や、ダイヤ作成や日々の運行管理、安全確保に関するスキルが主である。

現場期間中に運転士になれば、動力車操縦者という国家資格を手に入れることもできる。もちろん費用は会社持ちだ。(一説によると、一人の運転士を要請するのに1千万円程度の費用が掛かるらしい。。。)

鉄道会社ならではの仕事が一番出来るのは輸送系の仕事だろうし、皆が想像する鉄道会社の仕事はほとんどが輸送系である。社内でも一目置かれる花形の系統だ。 身につくスキルも鉄道会社ならではのもので、鉄道会社に就職した甲斐もあるだろう。

しかし視点を変えてみれば、鉄道会社だからこそ出来る仕事というのは、鉄道会社以外では価値がない仕事である。

運行管理のオペレーションやダイヤ改正などは鉄道会社以外には存在しないし、国家資格である動力車操縦者免許も、鉄道の運転にしか使えない。

社内では花形ではあるが、自身の市場価値という側面を見た場合、最も低い系統であることは否めないだろう。もちろん、あなたが鉄道会社で一生を過ごすと決めていれば何の問題もない。ただ、会社が合わないと感じたり他の業界でビジネスに挑戦しようと思った場合、時間が経てばたつほど難しくなる系統であることは間違いない

③施設・電気系

前回の記事では、鉄道会社内での力関係では比較的弱く地味な系統であると書いた。しかし、身につくスキルは色々とある系統だ。

例えば、施設系では土木工事の積算や発注などの基礎的なスキルも身につくし、建築系の仕事であれば、会社の補助で1級建築士などの資格も取得できる。外注化が進んでいるとはいえ、技術系のスキルはまだまだつけることは十分可能だ。

採用数も多く、大企業JRという肩書も手に入れたうえで、社内で市場に通用するスキルを身に付ける。これがこの系統の勝ちパターンだろう

実際、社内で一級建築士を取得し、30過ぎで大手デベロッパーに転職したことであっという間に年収1000万円以上を獲得した社員がいるという話も聞いたことがある。

社内で生きていくには多少地味ではあるが、実は市場価値が高く、もし他の道を選ぼうとしても行先は多数ある。上に書いたように、転職によって年収を一気に上げられる可能性もあるのだ。

社外に目を向ければかなり有利な系統であると言えるだろう。

④開発系

この系統は、主にビジネスを作っていくスキルが身につく。閉じた世界である鉄道会社の中では、最も社会に近く「カネの稼ぎ方」を一番真剣に考えているのはこの系統ではないだろうか。

JR本州三社は新幹線や首都圏の在来線など、強力な収益基盤を保持している。そのため、それらの基盤を活かしていかにオペレーションを行っていくか、といった面は非常に強い。オペレーションを確実にこなしていけば、着実に収益は上がっていく。

しかしビジネスはそうではない。決められたことを決められたようにやっていては収益を上げることは、一般的にはほぼ不可能だ。

鉄道会社のほとんどは普通にやっていれば収益をあげられるが、関連事業に関してはそうはいかない。不動産や商業施設、ホテル、ICカードやクレジットなどの決済事業は競合が多数存在する。

こういった競合がひしめく中で生き残ることは並大抵のことではない。駅まわりといった優位な立地を抱えているとしても、開発系にはビジネスを作っていくスキルが求められる。

ここでしっかりとビジネススキルを鍛えれば、市場価値も上がるだろう。新規事業を立ち上げた経験や市場で戦った経験は大きい。ぬるま湯ではない環境で育った経験は必ず役に立つだろう。

市場価値という面では、輸送系は最も不利

以上が、それぞれの系統で身につくスキルのまとめだ。

「市場価値」といった側面で見れば、輸送系は他の系統に比べ圧倒的に不利である。鉄道会社でしか身につかないスキルは、それ以外では役に立たないからだ。

一方で、社内では地味である施設・電気系統は市場価値が高い。また開発系や事務系も一定の需要がある。

JR各社への就職を考える際、将来身につくスキルや自身の市場価値も踏まえて、系統を選んだ方が良いだろう

もちろん、途中で会社を辞めるつもりがなければ関係ない。ただ、20代前半の価値観はその後変わっていくこともあるだろう。いざその時になった際に、自身にどのような選択肢が残されているのか、それはかなり重要である

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