転職を思い至るまで その1 -膨らんでいく不安-

年末で忙しく中々記事更新が出来ず申し訳ありません。。

今回は筆者が体験した転職活動について簡単に書きたいと思います。

会社への疑念は入社式から始まった

実を言うと転職を決めたこれというきっかけや事件は、特にない。過去の記事で既に鉄道会社の実態や仕事内容については色々と書いているが、それらを含め先輩や上司の話を聞いて決めたというのが正直なところだ。

入社式に関する記事でも書いたが、そもそも入ってすぐの印象があまりにも悪すぎた。テレビやyoutubeで見て笑っていたワ○ミや○将のブラック研修そのものの研修が展開されたのだから。世の中から隔離され、研修期間中は飲みに行くことすら許されない。

しかも研修施設は古く無機質で、平成に入って20年以上経つのになぜこんなところが。。。という有様だ。

研修内容は精神論ばかりであり、ビジネスの話だけではなく鉄道会社の専門的な技術の事すらほとんど学ぶことはなかった。講師も能力が高いわけではないため、配られたプリントやテキストをひたすら読み上げるばかり。必然的に眠くなってしまい、講義中に居眠りする同期もいたが、それを見つけると長い長い説教タイムが始まり講義は終了する。

本社の偉い人の講義のカリキュラムも組まれていたため、少しは視座の高い話が効けると思ったが、「俺が若いころは…」とひらすら昔話をして終了。更に悪いのが、偉い人の講義だから毎回レポートを書いて講師に提出する必要がある。内容の無い話なので何を書くかなど思いつくわけないのだが、あまりにスカスカなレポートを提出すると、次の日の授業中に講師から「こんなゴミなレポートを書いたのは誰だ!手を挙げろ!すぐに書き直せ!」との公開処刑を受ける。しかも手書きのボールペンで書かなければならないのがさらに悪い。心をこめて書くためには、パソコンなんかもってのほかという理屈だ…

新入社員は全員寮に入らなければならないため、勤務時間が終わっても油断はならない。食事の時間や部屋の掃除など全てが評価対象となり、少しでも時間に遅れたり、部屋が汚かったりすると講師から怒鳴られることになる。朝から晩まで気の休まる時は全くないのだ。

そんなこんなで、新入社員研修を通じて会社に対する印象は一気に悪くなったのだった。実は毎年この研修中に会社を辞めてしまう人がそれなりにいるらしい。まあ、それもそうだろうなと思いつつ、これはあくまで新入社員研修で、意味のないように思えることを一生懸命やらせるのも社会人に向けた訓練なんだろう、普通に働くようになったらそんなことはないはずだ、と自分を納得させてなんとか乗り切った。

配属現場で思い知る鉄道会社の実態

そんなこんなでなんとか研修を乗りきった後、いくつかの現場に配属となった。総合職だと短いスパンで色々な職場に配属となり、しかも仕事内容もそれぞれ異なるため毎回一から仕事を覚えなければならず、非常に大変な時期だった。しかしそれ以上に大変だったのは、人間関係だった。

全く知らない土地で、全く知らない人たちの中に一人で放り込まれる。しかも、現場の人間からはそもそも総合職はあまりよく思われておらず、全員ではないがどうせすぐいなくなるから仕事をまともに教えても仕方ないという雰囲気を全面的に出す社員もいた。

総合職だから新入社員とはいっても沢山カネを貰っているんだろう、と冗談交じりに言ってくる社員もいた。詳細は別の記事で書くことにするが、鉄道会社の給与は総合職や鉄道職などの職種で別れているのではなく、役人のように等級と年次によって決まるため、総合職だからと言って高い給与が貰えるわけではない。更に言うと、下手に管理職になるより、現場の助役で残業をたくさんしたり、乗務員で手当を貰った方が高いという逆転現象も起こりうるのだ。

仕事内容もルーチンワークばかりで、基本的には新しいことは何もしない。ただひたすら毎日目の前の作業をこなすばかりである。将来的に現場長などの管理職になった際に、一応現場を知っているというアリバイ作りのためにやっているだけで、特に際立ったスキルも身につかない。

現場採用で10年以上も勤めている人はスペシャリストとしてその分野の技術の専門家としてのスキルが身につくが、長くても1年ほどしかいない総合職は中途半端なスキルしか身につかない。これを長ければ5~6年ほど続けるのだ。20代のほとんどを中途半端なスキルを身に付ける時間に使ってしまい、私の中でも焦りが募っていった。

中途半端な社会人

現場社員として特別なスキルが身につかないのは、総合職として入社したから百歩譲って良しとしよう。

しかし、だからといってビジネスマンとしてのスキルが全く身につかないことをその後の業務や先輩の話を聞いて認識した。

支社や本社に行くと流石に現場のようにやっかみの目で見られることは少ない。しかし閉塞的な毎日は相変わらず続く。細かな社内規則の見直しや現場の視察など、別にやらなくてもいいような仕事ばかり存在する。決められたことを決められた通りにやるのは、別に現場に限ったことではなく支社や本社に行っても特に変わらないのだった。

それもそのはずである。鉄道会社の一番の使命は、既にある巨大なインフラ設備を活かし、安全安定輸送を提供することであり、何かをドラスティックに変えたり、新規事業に積極的に取り組むことではないからである。ビジネスをする会社ではなく、オペレーションやカイゼンに力を入れるのが鉄道会社だ。

そもそも、現場力さえしっかりしていれば、立派な大学卒という肩書を持った総合職など必要ない。昔からの流れでいい大学の学生を採用しているだけで、特に頭の良さやビジネスセンスなどは現在の業務においては求められていないのだ。会社説明会や研修では、若い力を活かしてだとか、積極的に新しいことに挑戦し…等と耳触りの良い言葉が言われているが、採用担当者や研修担当者の誰一人として本気で思っていない。大体、新しいことに挑戦したり成功体験を持っている社員自体が存在しないのだ。ありもしない幻想を求めて、やれ改革だの変革だの、茶番を繰り広げているに過ぎない。

こうして学歴だけは立派だが、現場のスペシャリストとしてもビジネスマンとしても役に立たない中途半端な社会人が毎年のように生み出されていく。

そして就職活動や会社に入ってすぐの時期に、会社を変えてやるぞ!と意気込んていた若者は、実態を知るにつれて徐々にその覇気を失っていき、際立った技術を持つわけでもなく、かといって自分でビジネスを作ることも出来ない、経歴だけは立派な中途半端な社会人が量産されるのだ。

上司や先輩を見て…

私自身はそれほど長く鉄道会社にいたわけではないが、上司や先輩から話を聞くことでそれなりにキャリアを考えてきたつもりではある。

入社数年後に本社で働いている大学の先輩に話を聞いたが、入社直後はバイタリティにあふれていたものの、数年後にはまあこんなもんかと割り切って、プライベートを充実するようにしたよ、と言っていたのが印象的であった。

潰れることはないし、適当にやっていても大きなミスをしなければ順当に出世し、決して高くはないもののそれなりの給与はもらうことは出来る。そういう意味では非常に良い職場かもしれない。

ただ、何が出来るわけでもなく、何かに挑戦するでもなく、 程々の給与を貰って家族や友人とプライベートを楽しむ、そんな人生は面白くないと筆者は思ってしまった。

鉄道会社の離職率は低いと言われているが、こんなぬるま湯な環境をあえて抜け出したいと思う奇特な人が少ないという理由もあるが、そもそも何のスキルも持たない中途半端に経歴がありプライドの高い使いづらい人材を他に雇う会社があるのか、という理由もあると思う。長く鉄道会社にいて、スキルを活かして転職を成功させたという話は、それなりに色々な話を聞いていたと自負する私でもほとんどない。

そういうわけで、鉄道会社で”ゆでガエル”になる前に転職を決意したのだった。

ただし、その道のりは決して簡単なものではなかった…

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