総合職の採用系統 -それぞれどんな仕事をするのか?-

今回は主にJR各社、特に主要三社(JR東日本、JR東海、JR西日本)の総合職の採用系統について紹介しよう。

採用系統で一生の仕事が決まる

ご存知の方も多いかもしれないが、JR各社は「総合職」という採用は行っていない。JR各社の総合職の選考を受ける場合、多数ある系統から一つを選ばなければならず、「総合職○○系統」といった採用になる。

ご存知の方も多いかもしれないが、JR各社は「総合職」という採用は行っていない。JR各社の総合職の選考を受ける場合、多数ある系統から一つを選ばなければならず、「総合職○○系統」といった採用になる。

選考の時点で系統が完全に分かれており、入社後も退職するまで絶対に系統は変わることはない

「総合職」だからジョブローテーションもあるし、やりたいことや適性があればどんな仕事も出来るのではないか?という考えは甘い。ジョブローテーションはその系統内での動きだし、ポスト公募のようなシステムに応募しても、「あなたは○○系統だから。。。」という理由で受け付けられないことも多い。

つまり、選考の時点で自分が一生携わる仕事がほぼ決まってしまうため、系統選びは慎重にならなければならない。

採用系統は大きく分けると4つ

会社によっては10近くの系統があるが、まとめると、①事務系、②輸送・車両系、③施設・電気系、④開発系となる。ちなみに、理系や文系、専攻内容によって受けられる系統も変わったりするので、その辺りは各社の採用HPを確認してもらいたい。

それでは、各系統を紹介していこう。

①事務系

事務系、とだけ書かれるとイマイチピンとこない人も多いだろう。鉄道会社の事務系統は、人事部や総務部、財務部や法務部、営業部、経営企画部など、会社の根幹を担うような部署に配属される系統である。

要は、鉄道の最前線ではなく、資金を調達したり、人事制度を変えたり、社内規則を見直したり、旅行や切符などの新商品を開発する存在である。一番、普通の会社っぽい仕事をするのがこの系統だろう。

もちろん、入社して2~3年程度は駅員や乗務員など鉄道の仕事に携わるが、その後は一部例外を除いて鉄道に関する仕事に関わることは少ない。

ちなみに、歴代社長はどのJRにおいてもほとんどがこの事務系統から輩出されている。というのも、鉄道会社では人事が大きな力を持っているからだ。組合との窓口になるのは人事部であり、鉄道会社=労組であるから、ここをうまくできる人でないと経営は厳しいという事だろう。

こういう背景もあり、会社内で最も力が強いのは事務系統だ。

もし、あなたがJRの社長を目指すのであれば、事務系統で入社するのが良いだろう。その分人気も高く採用人数も少ないので、入ることは難しいが。

②輸送・車両系

会社によっては、輸送・車両系は運輸系とも呼ばれているし、輸送系と車両系が分かれて採用されているところもある。

この系統は事務系に続き人気の高い系統である。この系統はわかりやすく、文字通り鉄道の日々のオペレーションを担っている分野である。

車両の整備や車両への投資計画、運転士・車掌などの乗務員の管理や、ダイヤ構築、日々の運行管理、輸送改善など輸送関係の仕事を全て担う系統だ。

現場を多く抱えており、その分入社してから現場にいる期間が他の系統と比べて長い。駅員から車掌、運転士、指令員と1年毎に現場が変わっていくイメージである。

鉄道の最前線に携われるし、鉄道会社でしか出来ない仕事なので、国内の輸送を担っているというダイナミックな実感を一番得られるのもこの系統だろう。

事務系の次に発言力があるところも、輸送系統である。社員の過半数を占める運転士や車掌などの乗務員を抱えているのが輸送系なので、政治力があるのだ。

出世は事務系の次には有利で、社長も何人か輩出している。ちなみに、下手に力がある分事務系にライバル意識があり、事務系と仲が悪い。

ただ、車両側に配属されてしまうと、そこまでの力はない。車両は技術寄りであり、どちらかといえば後で紹介する施設系に近い。技術系は抱えている社員も少なく、政治力がない。

この系統も事務系に次いで人気のある系統で、採用人数は少ない。専門性が求められないので、対象とする学生数が多いこともあるだろう。

③ 施設・電気系

施設・電気系は、駅構内の整備や土木、保線、建築であったり、鉄道信号や電力供給を整備する。

鉄道会社での電気や土木は外から見るとよくわからないが、いわゆる縁の下の力持ちである。線路が保守されていなければ脱線するし、電気が無ければ電車は動かない。また信号が出なければ電車の運行は不可能だ。

では、JRに入った人間が実際に現場に出てメンテナンスや建設をするかといえば、そうではない。下請けの管理などの書類仕事がメインである。昔は本体で設計や工事も担っていたが、今は外注化が進んでおり、仕事としてはマネジメントがメインだ。

入社して1~2年は現場仕事を行い、その後は発注者として管理に携わるキャリアプランが一般的である。

ちなみに、技術系の資格は業務で必要となるので会社の金で取得することが出来る。筆者の知り合いでも、一級建築士を取得した人もいた。

ここは事務や輸送に比べると発言力はない。しいて言えば、土木建設を担う部署だろうか。電気や信号通信は存在感があまりない。

これらの系統から社長が出たことは、ほぼない。社長やそれに近いポストを狙うのであれば、この系統は辞めたほうがよいだろう。

採用人数は比較的多く、理系の一部の専攻出身者を対象としているため、単にJRに総合職として入社したいのであれば穴場だ。

④開発系

近年、最も勢いがあり将来性がある系統だろう。

開発系は鉄道事業を核に、鉄道の利用促進と施設収益という相乗効果を最大限高めるために不動産、百貨店などを展開する。またSuica事業など金融関連の事業や、最近できたJR東日本スタートアップやJR西日本イノベーションズなどの、投資業務を行っているのもこの系統だ。

入社して1~2年程度は、駅員などの現場を経験するが、その後鉄道と接することはほぼない。

各社とも鉄道事業は人口減少により将来性が少ないため、関連事業を伸ばそうとしており今最も力を入れている。私鉄はこちらの方がメインの事業だが、JR各社も私鉄モデルに近づきつつある。

新興勢力ではあるが、いずれ関連事業が収益の大半を占めるようになれば、社長を輩出するなど、経営に深くかかわるようになるだろう。実際、JR九州は関連事業にもっとも力を入れており、総合職は全員関連事業を経験させるほどの力の入れようだ。もし、開発系の社長が出るとしたら、JR九州がその先陣となるだろう。

このように最も勢いがあるため、学生には非常に人気で入るのも難しい。 商業施設開発や不動産開発も出来るので、デベロッパー志望の学生にも人気だ。

ただ、勢いはあるものの、JR各社はやはり自身は鉄道会社であり鉄道以外は傍流であるという認識は根強い。今は関連事業が勢いがあるが、カネを稼いでいるのは結局は鉄道事業なのだ。将来的にどうなるかは不透明である。

どこが最もおいしい系統なのか?

最後にどこが最も良い系統なのかを考察してみよう。

切り口は色々とあるが、単純に会社に入って力をえたいと思うならば、

事務系>輸送系>開発系>施設・電気系

となるだろう。社内で頑張るのであれば、事務系か輸送系が最も良い。開発系は勢いはあるとはいえせいぜい新興勢力である。施設・電気系は入るのには穴場だが、入ってからは傍流である。

以上が大まかな結論であるが、どの系統に入るかを判断するには別の軸も存在する。今度はそれについて書いてみよう。

“総合職の採用系統 -それぞれどんな仕事をするのか?-” への2件の返信

  1. JR北の採用を見ていたのですが、最近は人手不足から、入社後に人事が系統を定めるそうです。適材適所というものの、概ね早期退職の激しい土木、保線関係へ、文理問わず流されるとのこと。
    事務、運輸⇔それ以外では、ジョブローテーションも厳しいことから、早く解決されれば良いのですが。

    JR東のIT系統、JR西の創造系統、JR四国の事業系にはこれからも注目しようと思います。それとJR東、JR九州の農業系。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です