鉄道会社の社風 その2 ー何事も安全第一ー

前回の記事では鉄道会社の体育会系な社風について紹介した。今回はJR各社や私鉄にありがちな、保守的な風土について語ってみようと思う。

人間関係だけではなく仕事の進め方について知っておくことも、これから鉄道会社に就職を考えている学生や、転職を考えている人にも参考になると思う。

仕事の基本は「安全第一」

鉄道を動かす上で最重要視されるのが安全である。何しろ、百トンを超える鉄の塊が時速100Km程度で走っているのである。下手をすれば一度の事故で100人以上の死者が出る。

よく言われるのは、「鉄道の歴史とは事故の歴史である」という言葉である。普通に電車に乗っている分には意識することはないが、列車が一本走るためには予想以上に多くの安全対策が施されている。

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鉄道会社の社風 その1 ー体育会系なJRや私鉄の鉄道部門ー

冬季インターンや学内説明会なども実施されつつあり、3月からは正式に2020年卒の就職活動が解禁される。就職を考えている学生はそろそろ本格的に就活シーズンを迎えるので、今回はJR各社を参考に、鉄道業界の社風を紹介していきたいと思う。

新卒で就職を考える人だけでなく、転職する社会人の方も、業界選びの参考となれば幸いです。

世間のイメージとはギャップが大きい鉄道会社の社風

どういった人達が鉄道会社で働くのに向いているのだろうか。

向くか向かないかを考えるためには鉄道会社がどういった雰囲気でどういった社風なのかを整理する必要がある。

筆者もそうであったが、学生は就活の際に企業説明会やOB訪問、会社パンフレットを通じて企業研究を行う。

しかし実際に働いてみると、事前に伝わってくる会社の雰囲気と実際の雰囲気が大きく異なり、人によっては会社を辞めてしまうことも珍しくない

せっかく長い時間を割いて就職活動をしたにもかかわらず、そのギャップにより会社を辞めることは本人にとっても会社にとってもメリットは全くない。ある程度覚悟をもって入社しなければ辛いのは自分なのだ。このギャップを無くすためにも、説明会やOB訪問では語られない姿を知ってほしい

ここではJR系の会社について紹介するが、JRも会社や系統によっては雰囲気も異なるが、元々は同じ組織だったため大体が同じ雰囲気を持っていると考えてよいだろう。

ちなみに、私鉄は不動産や商業も行っているため全体としての状況は異なるが、鉄道部門は概ね似たような雰囲気である。それを今から紹介していこう。

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転職を思い至るまで その2 -転職エージェントとの面談-

前回の記事では転職を志した理由について書いた。簡単に言えば、技術も何もない中途半端な社会人になってしまうことが嫌になったのだった。

今回は鉄道会社からの転職活動の実際について、私の体験をもとに書いていきたいと思う。

まずは転職サイトに登録

転職したい企業がはっきり決まっている場合、その企業に連絡したり知人の伝手をたどることも出来るだろう。

しかし、何となく転職したいな、どこかいい企業はないかなというふわっとした状態なら(多くの人がそうだろうが…)、とりあえず転職サイトに登録すべきである。

登録するのはタダだし、自分の職歴や学歴を入力することでおススメの求人も紹介されるし、転職エージェントとの面談を通じて転職活動全般のアドバイスをもらうこともできる

私自身も入社して1年も経たないうちに、とりあえず大手の転職サイトには登録を行った。それだけでも、辞めても新たな道は開けそうという心の余裕ができて、普段の業務で嫌なことがあっても、まあいざとなれば辞めればいいし…と耐えることができた。

ちなみに、登録してエージェントと面談するという点について抵抗を覚える人もいるかもしれない。しかし、面談をしたりアドバイスを貰ったからといって、転職を強要されることもないし、しつこく電話が掛かってくるわけでもないから心配しなくてもよい。

そもそも転職サービス自体なんとなく登録だけしている人がほとんどであり、エージェント側も皆が本気で転職を考えてるなど思っていない。沢山人に会って、数%程度の人が本気で考えてくれれば成り立つ商売なのだ。皆さんが罪悪感を持つ必要は全くない。

話はそれたが、私もとりあえず大手数社の転職サイトに登録してみた。

流れは簡単で、名前や会社名、職務経歴や学歴、住所、資格などを何も考えずに入力していく。ものの数分で登録は終了した。

自己PRや志望動機などを入力する部分もあるが、とりあえず空白でもよいとのことだったので放置する。

登録が完了すると、サイトに掲載されている求人情報が見られるようになる。その数は非常に多く、世の中にはこんなにも沢山の求人があるのか…と少し感動した。誰もが知っている大企業も求人を出しており、世の中には色々な道があるのだな、と思った。

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鉄道会社の配属先 その2

前回の記事では、鉄道会社に総合職として就職する際は広域の転勤や、誰も行きたがらないような過疎地域に配属になる可能性を覚悟する必要があると書いた。

今回は配属の重要性について更に深く考えてみたい。

長いと5~6年、縁のない地方に配属される

鉄道会社では一般的にどの会社にどんな系統で入社しても、最初の数年間は現場を経験することになる。この期間は会社や系統によって異なるが、長ければ5~6年は様々な現場を経験することになる。

総合職としての採用を大幅に増加させたことや、現場採用から管理職へステップアップするコースが整いだしたことから、管理職などのポストが人数に比べ減少したため、特に近年は現場期間が長くなっている。

この5~6年という現場経験の期間は、ずっと同じ職場に居るのではなく例えば駅員を2年、車掌を2年、指令を2年、といったように短い期間で様々な現場を異動することになる。総合職として入社しているので、自分の系統に関連する現場は一通り抑えておいた方が良い、といった考えに基づくのだろう。

この現場期間において広域の異動が行われることはほとんどない。というのも同じ地域で様々な現場業務を経験することで、色々な視点から鉄道のオペレーションを学ぶことが出来るからである。鉄道会社は巨大な組織であり、エリアごとの支社において、取り扱いや規則が異なることは珍しくないため、同じ場所で経験する方が混乱が少なくて済むのである。

つまり最初に配属になった地域で、最長で5~6年過ごすことを覚悟しなければならない。基本的に鉄道会社の総合職は新卒採用のみ行っているため、ほぼ100%新入社員は20代である。これが意味するのは、もし地方しかも過疎地域に配属になった場合、貴重な若い時間である20代の約半分を田舎で過ごすことになる。

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鉄道会社の配属先その1

今回は、就職してからは避けられない、配属問題について紹介したいと思います。

働きたいところで働けない?

どんな会社でも転勤は多かれ少なかれ存在する。
特に総合職の場合は全国転勤や、場合によっては海外転勤・駐在という可能性もある。

鉄道会社も同様であり、総合職と一部の現場採用の人間には転勤が存在する。
私鉄であれば路線の範囲が狭いため、引っ越しを伴うような転勤は少ないが、JR各社は経営するエリアが広く、大型の転勤は避けられない。

私鉄であっても、事業エリアが広い場合は自分の希望しないエリアへの配属はある。JRよりリスクは低いものの、配属リスクは絶対に存在する。

近年一部のJRではエリアを限定した総合職採用といったことも行っているようだが、これについても採用されたエリア以外に異動することがないことを保証するものではない。

稀に就職活動において、例えば首都圏で働きたいのでJRを志望します、といった学生が存在するが、JRは地方にも沢山のエリアを抱えており(むしろ地方の比率の方が高い)、東北等の地方に配属される可能性を考えず就職することは、考えが足りないと言わざるを得ない。

最初の配属で運よく首都圏配属になったとしても、JRの場合、数年置きで異動が繰り返されるため、常に首都圏において働く可能性は少ない。

これは他のJRであっても同じであり、例えば近畿圏で働きたいといって就職した人が山陰地方に配属になることもある。

東海であれば総合職は基本的に新幹線に携わることになるため、東名阪のどこかになり、大都市で働く可能性は高い。これも人気がある理由の一つだろう。

しかし、2027年に開業を控えたリニア建設の部署に配属された場合、中部地域の山の中に配属されることは間違いない。

余談だが、リニアをやりたいといって就職したいという学生は多いようだが、就職後には一変する。誰もリニアに行きたがらないのだ。

この記事にもある通り、リニアの開業までの時間は長くないが、課題はたくさんある。

筆者の知り合いから聞いた話だが、リニアの現場の社員はものすごい長時間労働を強いられているようだ。それを皆知っているから、リニアに配属されたがらない。そんな要望などは聞いてもらえないが。

話はずれたが、鉄道会社を志望する学生は、転勤を繰り返すこと、しかも必ずしも大都市ではない、どちらかといえば過疎地域において働く可能性があるという事実をしっかりと認識してほしい。

高校、大学と常に東京や大阪などの大都会で育った人間が、地方都市に配属となり、親類縁者や友人もおらず、環境の違いに大きな戸惑いを覚える例は少なくない。もちろん、その土地それぞれには良さを見つけ、新たな人間関係を作っていけばいい話ではあるのだが。

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