学歴について -JRや私鉄に入るために学歴は必要か?-

就活ではよく「学歴フィルター」なるものの存在がささやかれる。JR各社や大手私鉄などの鉄道会社において、採用に学歴は関係あるのだろうか?今回はその点について書いてみたいと思う。

採用実績は高学歴の学生ばかり

鉄道会社の総合職は高学歴の学生を多数採用している。学校名は採用に全く関係ありません、と就職活動の説明会ではよく言われている。もちろん、コンプライアンスにうるさいこのご時世に、弊社は高学歴の大学からしかとりません!とは、口が裂けても言えるはずがない。

しかし蓋を開けてみれば、皆が名前を知っているような大学がずらりと並ぶ。筆者がいた鉄道会社でも、先輩や同期、後輩もほぼ全てが世間的に名が通っている大学だった。

特にJRは東大、京大をはじめとする旧帝大と一橋、東工大、その他地方国立大学が多数である。早慶や関関同立といった私大も採用しているが、国立大学に比べるとその絶対数は少ない。

例えばJR東海は、JR東大と言われているくらい東大が多い。JR東海は就職活動において人気も高く、リニアや東海道新幹線など大きなことが出来るという点が学生からの支持を得るのだろう。

結論を言うと、所謂「学歴フィルター」は存在するのだ。筆者も経験したが、そもそも就活の説明会の時点で、ある程度高学歴の学生を対象とした個別の説明会が行われている。東大や京大といったトップ層の大学であれば、OB/OG懇親会の名のもとに、その大学のみを対象とした採用セミナーを行っているのが現状だ。

このようなセミナーでリクルーターから良い評価をえることで、選考のステップに初めて乗ることが出来るのだ。旧帝大や早慶上智、一橋や東工大などの学歴がなければ、選考に進むことは難しい。MARCHや関関同立だと、総合職よりもプロフェッショナル職などの現場採用の方が確率が高いだろう。

では、学歴がなければJRや私鉄の総合職として鉄道会社に入社することは出来ないのだろうか?実は必ずしもそうではない。

学歴が無くても「コネ採用」で入ることも可能?

ごく稀に、あまり有名でない大学の採用実績があったりする。後々知ることになったのだが、親が同じ会社に勤めており、つまりコネ採用だった

筆者の同期もかなりの高学歴ばかりだったが、ある時あまり聞いたことがない大学を卒業した人がいた。よくよく話を聞いてみると、親が同じ会社の要職だった。

正直なところ、彼の仕事の実力はあまり褒められたものではなく、なぜこんなところにいるのだろうというのが筆者の周りからの評価ではあったが、その話を聞いて合点がいった。

私個人としては、コネ採用は悪いことではないと思う。ビジネスにおいて、人脈は財産であるし、使えるリソースは最大限活用して自分のやりたいことをやるのは全く持って正当な道だからだ。それが親のコネであろうと、仕事において成果を残してくれれば誰も不満に思うことはないのだ。

しかし、実態としてそうはなっていない。親が同じ会社だから…というだけで総合職として入社をして、仕事もできるわけでもないのに、総合職だからという理由だけでそれなりのポストについたりする。

これでは誰も幸せにならないが、実態として仕事の出来る出来ないにかかわらず、コネ入社は存在するのだ。そこは留意しておいてほしい。

なぜ高学歴ばかり採用するのか?

話はそれたが、コネが無い人がJRに総合職として入りたいのであれば、国立大学、特に旧帝大を卒業するのが最も有利だろう。

ではなぜ、高学歴の学生ばかり採用するのだろうか。理由は三つ考えられる。

一つは、旧帝大をはじめとした有名大学出身の社員が多く、そのような人々と概ね似たような背景を持った人間を採用しておけば無難だからである。

例えば、高学歴の学生を採用したがその仕事ぶりが悪く、職場から「なんでこんなやつを採用したんだ!」と採用担当に抗議が入っても、最悪「彼・彼女は○○さんと同じ大学出身なんで…」といった言い訳が出来る。

「多様な人材を採用します」とは詭弁であり、結局は似たような雰囲気の人間が集まることになる。

二つ目の理由として、総合職はいずれ現場長等の管理職となることを想定しているので、ある程度学歴に箔がついていれば、職場からの支持を得やすい事が考えられる。

正直なところ現場など最前線の職場は、現場長などいなくても、作業は順調に進むのである。

いちいち現場長が日々の作業の指示をだし、終わったらチェックをするということは全くない。形式的には指示をしていることになるが、既に定められた手続きに則っているだけであり、誰がやろうと変わりがない仕事なのだ。

現場長は作業の様子をたまにぶらっと見に行き、「よう、頑張ってるか?」と声をかけて、適当に現場の愚痴や要望を聞いて、改善できるところは改善する、といった仕事である。大した改善でなくても、高学歴の総合職の施策であれば、現場の人間からすると、「やはり高学歴の人は色々考えているのか」と、納得感が得られる。

また若くして現場長になっても、「高学歴だし、当たり前か」と反感を買うことも少ない。もちろん、気負い過ぎて自分を押し出し過ぎた結果反感を買う現場長も多いが。

三つ目の理由としては、高学歴の学生は扱いやすいからだ。

高学歴の学生は高校受験や大学受験などを真面目にこなしている、所謂学校では優等生な存在である。言い換えれば、先生のいう事に従って真面目に勉強をして、それなりに部活にも打ち込んでいる人材である。

つまり、上から言われたことを素直に受け入れ、真面目に実行に移す人が全体的に多いのだ(まれに筆者のように不真面目な存在もいるが…)。

これは会社にとって非常に都合がいい存在である。根が真面目なので、社会人とはこうあるべき、こうするべき、と一旦刷り込んでしまえば特に疑問を持たず指示に従ってくれるからだ。

少し前だが、オウム真理教が世間を騒がせた時期もあった。教団の幹部は東大の医学部をはじめとして早慶や旧帝大など圧倒的な高学歴が多かった。これが示唆するのは、高学歴の世間知らずはだましやすいし、使いやすいのだ。

逆に、いちいち自分の頭で考えて、上に逆らうような人間は扱いづらいし面倒だ。高学歴の人材を雇えば、自分の強い意思を持って何かをしようとする人材を雇ってしまうリスクは少なくなる。これは非常に都合がよいのだ。

そもそも、いい大学を出てまでする仕事なのだろうか?

ここまで高学歴の学生の採用が多い理由を書いてみたが、みなさんの中にはこう疑問を持った人もいるだろう。
「いい大学を卒業できるほど優秀な人じゃないと出来ない仕事が多いからじゃないの?」実は全くそんなことはない。

大学時代の専攻に関係ない系統に採用されている人も多く、また輸送系の採用であれば、輸送についての学部など存在しないので、学生時代の知識は全く必要ないのである。

技術系であっても、技術開発に携わる人は少なく(技術開発は主に鉄道総合技術研究所が行う)、多くはメンテナンスや、メーカーが設計した製品のチェック、現場のマネジメントなどの業務を行うので、技術者といったイメージからは程遠い。

実際こうした業務は大卒の社員だけでなく、高卒の社員も普通に行っているため、大学や大学院を出る必要はない。学生時代に学んだ専門的な知識を活かし、技術者として活躍したいといった優秀な学生には向いていないだろう。

いい大学を出て総合職としてJR等の鉄道会社に入り、経営のスキルや、最新鋭の技術を身に付け、自身のスキルアップを図りたいといった考えをもった学生、特に高学歴には多いかもしれない。

しかし経営を考えるのは入社してから数十年後だし、技術を持っているのはメーカーである。身に付くスキルは、社内の調整能力、組合関係の複雑な人間関係のマネジメント、社内資格など、内向きで社内でしか通用しないスキルである。これらに高学歴が必要だろうか。

経営幹部に高学歴の社員が多いことは確かであり、出世のスピードが現場採用の社員に比べ早いことも事実である。

しかし20年以上しっかりと勉強や研究をしてきた結果、それまでの経験は役に立たず、身につくスキルは内向きのものばかりで、外では通用しない人材になってしまうことは少し残念でないだろうか。

一生を鉄道会社に捧げ、それなりの忙しさでそれなりの給料をもらい、それなりの地位につく。こういった事を求めているのであれば、おススメできる企業である。

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