鉄道会社の福利厚生 -電車は乗り放題?-

これまで、このブログやTwitterでは、鉄道会社はまったり高給ではない事を話してきた。マイナスな面がやや強調され過ぎたきらいもあるため、メリットも紹介しておこう。

確かに、総合職で入社したとしても思っているほど給料は高くない。しかし、福利厚生は充実しており、生活に困るという事はない。今回は、制度としてある福利厚生と、それ以外の生活上のメリットについて紹介してみよう。

制度としての福利厚生 -寮や社宅、家賃補助など-

制度のメリット

公式な福利厚生で最大なのは、やはり住宅関係だろう。

鉄道会社は転勤が多いが、基本的にどこに配属になっても寮が完備されており、安価に住むことが出来る。また、家さがしに時間を割かれることもない。意外と家さがしは面倒だし、敷金や礼金が必要で家具類もそろえなければならない等、出費が大きいが、これを避けることが出来る。

費用は、光熱費込みで月1万円程度。(最近は値上げしている所もあるらしいが、それでも普通に賃貸するより圧倒的に安価である)

しかも、食堂がついていることが多く、こちらも数百円でバランスの良い食事がとることが出来る。味に関して多くを求めなければ、問題ないだろう。

入社してすぐの手取りは、10万~15万円程度なので、住居費や食費がこの程度で住むことは大変ありがたい。

また、同期や先輩も同じ寮に住んでおり、プライベートを含めて懇親を深めることも可能だ。寮によっては、休日にイベントを開催することもあり、そういった集まりが好きな人は楽しいだろう。

結婚してからも社宅がある。社宅も月数万円程度で住むことが出来て、家計にやさしい。決して新しく綺麗なわけではないが、贅沢を言わなければ満足するレベルだ。

寮や社宅が嫌なのであれば、家賃補助制度もある。数万円を上限として、家賃の一定割合を支給するという制度だ。これなら、自分の好きなところに住むこともできる。

ただ、せいぜい3万円程度が上限であることが多いため、都会であればほぼ賃貸に住むことは不可能だろう。地方でもあまり良い所には住めないことが多い。

会社としては寮や社宅に住むのが基本で、家賃補助はあくまで補助的な制度というメッセージだろう。

制度のデメリット

良い事ばかりに見えるが、デメリットももちろんある。

寮は風呂やトイレ、洗面台が共有なことが多く、職場の先輩や上司に遭遇することも少なくない。プライベートを完全に切り分けたい人にはあまり良い環境とは言えない。寮のイベントも面倒な人にとっては厄介なだけだ。

寮によっては門限や規則が厳しいこともあり面倒だ。配属先が決まれば、寮は自動的に決まってしまうので、自分の入る寮が厳しくても逃れることは出来ない

また、部屋は狭く、少し物が増えてきただけで窮屈だ。隣の部屋の音が聞こえることもあり、落ち着かない事もある

鉄道会社の寮や社宅だからと言って、立地が必ずしも良いとは限らず、駅から徒歩20分という不便な場所にあることも珍しくない。

昔は駅周辺にあり、職場への徒歩通勤も余裕だったらしいが、駅周辺の土地は収益を生み出せるため、コストにしかならない社員寮や社宅は遠くへ追いやられてしまったという経緯があるようだ。

現場のローカルルールで、新入社員は始業時間の1~2時間前に出社しなければならないことも多いが、遠いと非常に不便である。

最後に、これはあってはならない事だが、盗難などの犯罪が起きることも多い。。。鉄道会社という多数の社員を抱えていると、中には不届きものもいるのだ。

しかも悪いことに、寮の管理側も事をうやむやにしてしまうこともままある。寮の管理人は会社のOBであることが多く、下手に問題が起こることで自身の責任問題になるような面倒は避けたいという気持ちが働くのだろう。

隠れた福利厚生

ここまで紹介した寮の制度や、それ以外の有給など意外に意外と大きいのが、自社線割引制度だ。

会社は福利厚生として認めていないが、かなり恩恵がある制度である。要するに、自社線であれば無料もしくは大幅な割引を受けられる

具体的には、乗車券はタダで、特急券等は半額やそれ以上、もしくはその近くまで割り引かれる。しかも本人だけではなく、その家族まで制度が適用されるため、旅行が好きな人や鉄道に乗ることが好きな人にとってはかなり美味しい。

例えば、新幹線を持っている会社の社員であれば、乗車券がタダなうえ特急券が半額になることもあるので、正規料金の大体1/4の料金で新幹線を使うことが出来る。これはかなり大きな福利厚生制度だ。交通費が浮くのはありがたいだろう。

よく、「鉄道会社の社員って、電車タダなんですか?」と聞かれるが、概ねそれは合っている。

ただ、これも未来永劫続くとは限らない。JRの場合、国鉄時代は特急列車等も含めてほぼ無料で鉄道に乗れていたらしい。しかも、私鉄との間にも協定を結んでいたこともあり、日本全国の鉄道、バス、ロープウェイ含めてタダで乗り放題だった時期もあるらしい。

しかし、それも今ではない。またJR貨物は少し前まではJR線全線が割引料金で乗れたが、今ではそういった割引は無くなっているようだ

まとめ

鉄道会社の福利厚生は、プライベートが確保できないなどのデメリットはあるものの、安い給料でも生活できる程度には充実している。

また、自社線に大幅な割引料金で乗ることが出来るため、旅行が好きだったり、ちょっと遠出して遊びに行きたい人や鉄道好きには美味しい制度もある。

こういった福利厚生制度がいつまで続くかわからないが、ほどほどの給与で福利厚生を最大限利用しながら生きていきたいなら、鉄道会社は良い会社と言えるだろう。

鉄道会社の給料 -実はおいしいのは運転士?-

前回の記事では、鉄道会社は世間で言われているような「まったり高給」ではない事を紹介した。

大企業だから高給だろうと入ってみると全くそうではない、入社前には会社からは決して話されることがない裏側について紹介した。

しかし、職種によっては色々な手当がつき、多少給料が良くなることもある。今回は、その中でも最も大きい、乗務員手当について紹介しよう。

「乗務員手当」はどう計算するのか

鉄道会社には様々な手当が存在するが、最も大きな手当は、運転士や車掌が乗務した時に支給される「乗務員手当」だ。

これは大まかに言えば、乗務時間と距離に応じて支給される手当であり、基本的には以下の式で計算される。

乗務員手当総額=①1か月あたりの乗務時間・距離 × ②時間・距離単価 

それぞれの項目についておそらく鉄道会社に勤めている人以外は聞きなれないと思うので、簡単に解説してみよう。

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