鉄道会社の給料 -本当に「まったり高給」なのか?-

4月1日に鉄道会社に就職した新社会人の方は、そろそろ人生初の給料日が近付いてきたことだろう。既に給与明細が配られている人もいるかもしれない。

今回は、鉄道会社の若手の給料について、少し詳しく書いてみようと思う。

新社会人の人は、今後数年働く中でどれくらいの給料がもらえるか、またJR各社をはじめとした鉄道会社への就職を考えている人にも、会社選びの一つの軸として参考にしてほしい。

一般的に高給と思われている、鉄道会社(特にJR各社)の総合職の給与に注目して書いてみる。

鉄道会社は決してまったり高給の良い仕事ではない

学生をはじめとして、他の業界で働く社会人でも、鉄道会社は安定で高給、仕事はまったりというイメージを抱いている人は多いだろう。

結論から言ってしまえば、「まったり高給」というイメージは全く間違っていると言わざるをえない。

簡単に表すと、手取りは以下のような式であらわされる

手取り=基本給+各種手当(都市手当、超勤手当、特殊勤務手当、etc)ー各種控除(所得税、住民税、健康保険料、年金保険料、etc)

それでは、細かく見てみよう。

1.30歳位までは、基本給は大体月20~25万円

JR各社の総合職の場合、基本給は学部卒で18万、院卒で20万程度からスタートする。(JR東海はこれよりもやや高い)

ちなみに、給与体系は総合職、現場職関係なく、公務員と同じように職務階級によって決まる。

最初は一番下の階級から始まり、1~2年に一度の昇進試験に合格すれば階級が上がっていく。

上がり幅は、大体月1~2万円程度である。

例えば、大卒で22歳で就職し、ストレートに昇進試験に合格した場合、

・22歳:18万
・24歳:20万
・26歳:22万
・28歳:24万
・30歳:26万

という所が目安だろう。

ちなみに、必ずしも全員が昇級試験に合格するとは限らないので、なかなか試験に合格せず給料が上がらないという人も多い。

定期昇給もあるが微々たるものだ。春闘において、組合の交渉により月の基本給やボーナスの支給額を上げるというものだが、たかだか数百円~千円程度のアップである。

ベースアップが決定されると、賃金闘争に勝利!会社からの譲歩を引き出し大きく前進!など、組合の新聞などで大きく成果がアピールされるが、そもそも組合費として毎月数千円が給料から天引きされているため、実に費用対効果が薄いと言わざるをえない。

以上のように組合のベースアップと定期昇給はほとんど影響がなく、昇級することでしか基本給は上げられない。

2.各種手当で、月あたり最大プラス3~5万円

基本給の他に、各種手当が存在する。鉄道会社には様々な手当があるが、簡単のために主要なものだけ紹介しよう。

① 都市手当

会社によって呼び方は異なるが、都市手当というものがある。

配属先の支社によって割合が異なり、首都圏や近畿圏、名古屋圏などの大都市が最も高く、基本給の10~20%が加算される。

人口や輸送量が少ない地域になるにつれてその割合は減少していき、地方の過疎地域であれば1%や場合によってはなしというように、かなりの差が出てくる。

例えば、基本給が20万であっても、一方は大都市圏に配属になり都市手当が10%、もう一方は地方に配属になり1%の場合だと、前者は月2万の手当、後者は2000円の手当というように、20万円以上も年収に格差が生じてしまう

このように鉄道会社は配属先により、同じ仕事をしていたとしても所得にかなりの格差が生じてしまうので注意が必要である。

また新卒である地域に配属になると、最も長ければ5~6年程度は同じ地域で仕事をすることになるため、金銭的にはかなり厳しくなるだろう。

ちなみに、会社のHPやパンフレットで説明されている初任給は、基本給に加えてその会社内で最も高い都市手当を加算したものを表示しているため、いざ入社して給料を受け取ってみれば、聞いていたよりも1万円以上少ないといった事態もありうる。

もちろん全員が希望通りに配属されるわけもなく、都市圏の人気の方が圧倒的に高いため、紹介された給料をもらえる人数の方が少ないと考えたほうが良いだろう。

② 超勤手当

残業代は、超勤手当として支給される。

残業代がつくかどうかは、残念ながら職場次第である。ある職場では残業をきっちり申請しなければ注意され、しっかりと勤務管理が行われるが、別の職場では残業を申請できる雰囲気ではなかったり、上長に認められなかったりして、サービス残業をせざるを得ない所もある。

鉄道会社でよく聞く魔法の言葉が、「自分の時間」というやつである。これは業務とは直接関係がない仕事をやる場合に使われる言葉であり、要するにサービス残業の事である。

小集団活動などは、自己研鑽を社員が自発的に行っているだけであり、会社側の業務指示ではないというタテマエだ。実際は、評価に関わったり職場に溶け込むためにやらざるを得ないため、実質強制なのだが。。。

職場の業務と別の活動は業務としてみなさず、深夜まで残って課題をしていても、全てサービス残業にされたという悲惨なエピソードも聞く。

最近は残業規制も厳しくなっているため、残業代で稼ぐことは難しく、特に現場であれば残業は少ないことが多い

そのため、現場配属が続く最初の数年間は、残業代は平均すれば月数万程度だろう。

③ その他手当

都市手当と超勤手当の他にも、特殊勤務手当といって、運転士や車掌、その他特殊な勤務を行うと支給される手当もある。

運転士の手当は特に高く、多ければ月10万程度加算されることもある。運転士はなるまでのハードルは高いが、なってしまえば残業することも異常時を除けばほとんどなく、給料も一般社員よりもかなり高いため、向いていればおいしい仕事かもしれない。

しかし異常時には一人で対処しなければならないし、事故を起こしてしまえば最悪刑事責任を問われる可能性もあるため、一長一短といった所だろうか。

この辺りは、別の記事で紹介しようと思う。

3.各種控除で、月5万円以上のマイナス

ここまでは加算される項目を見てきたが、ここからは給料から引かれる項目を見ていこう。書いてみると、意外と沢山のものが引かれている。

各種保険料や年金、所得税や住民税など他の会社でも引かれるものに加え、社員持ち株会や労働組合費、組合の共済保険や社員向けの貯蓄などが、さらに給料から天引きされる。

組合費は他の業界の組合と比較して高く、毎月1万円まではいかないが、少なくない額が天引きされていく。

また社員の持ち株会や団体保険、共済なども任意加入となっているが、右も左もわからない新入社員研修時にとにかく名前を書かされているため、いつの間にか多くの金が給料から引かれている

特に総合職の場合、会社の制度に加入することは当然と思われており、好む好まざるに関わらず強制的にお金が出ていく。

会社の寮に住んでいる場合は寮費も引かれるが、これは月1万程度なため、普通に賃貸を借りるよりも安くすむ。

以上を含めると、月に大体5~6万円程度の額が、給料から引かれることになる。

4.まとめ:手取りは大体20万円程度

以上をまとめてみると、月の手取りは大都市配属の総合職1年目であれば、残業がない場合は手取りは16万~17万程度だろうか。

2年目からは住民税も加わってくるため、階級が上がったとしても同程度である。30歳近くになっても、残業がない場合月の手取りは20万円にいくかいかないか程度だろう。

安定企業のためボーナスは毎回支給されるが、総合職であっても残業をしなければ、30歳近辺でようやく年収500万円だろう。また組合費などがあるため、出ていく額も多い。

ちなみに会社が企画する旅行プランへの強制参加があったり、会社の増収活動といって自社の企画乗車券を買わされる等の自爆営業のような活動もちょくちょくあったりするため、更に会社に使う金額は増えていく。

20代の頃は、月の手取りは30万にはほぼいくことはない一方で、会社の行事や増収活動などで出ていく金も多い。意外と生活は楽ではない

年収を求めるなら鉄道会社はおススメしない

以上のように、就職活動での高い倍率を乗り越え、大手鉄道会社に入社したとしても、残業を相当しない限り、思っているほど年収は高くならない

よく現場採用の人から、「総合職は給料も高いんでしょう」と言われたりもするが、結局給料は職務階級で決まっているし、有名大学卒だからといって加算があるわけではないので、全くの間違いである。

30歳近辺であれば、階級自体も同じであるし、むしろ職歴が長い現場採用の人の方が上の場合も多いため、給料の差はほとんどないといってもよいだろう。

40過ぎて管理職になることが出来れば、1000万近くの年収を得られるが、最近は出世のスピードも遅い

以上のように、鉄道会社が高給であるというイメージは全く間違っている。また配属地域によって収入にかなりの格差が生まれてしまう事を覚悟しなければならない。

確かにボーナスが毎回支給されたり、異様なまでの長時間労働といった事はないため、安定というイメージは間違っていないだろう。

ただ、責任が重い仕事をしている割に合わないと感じることは多いかもしれないし、配属先によっては残業代がつかなかったり、仕事量が多すぎることもあるだろう。

安定して高給であるというイメージを持って入社すると、給料の安さに驚くことだろう。

どんなに仕事を頑張って成果を上げたとしても、給料は階級で決定され、昇級は年功序列が基本であるため、自分の成果が給与面に反映されることはない

鉄道という生活の足を支える責任の重さや、地域に貢献することにやりがいを感じたり、給料は安いが忙し過ぎず安定して決まった仕事をしたいという人には、鉄道会社への就職はおススメできるかもしれない。

“鉄道会社の給料 -本当に「まったり高給」なのか?-” への4件の返信

  1. 新宿を走ってる会社ですが、若いうちは28歳500万、30歳600万とまあ安いです
    35で800、40で1100と、まあ恵まれてる方と思いますよ

    1. 準特急さん

      ミスをやらかさずにコツコツと長く働けば、鉄道会社はそこまで悪い環境ではないですね。
      閉鎖的な雰囲気や独特な社風を我慢できればの話ですが。

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