企業選びのやり方

久々に更新。2020年に始まったコロナは、1年以上たった今でも収まるどころか益々感染者数は増えて、一向に収束する気配が見えない。

去年の秋ごろには、政府のGoToキャンペーンで鉄道会社や旅行会社、飲食業界等、コロナ禍で苦境を強いられていた業界も復活の兆しを見せていたが、それもあっという間に中止になり、しばらく経営は厳しい状況が続くだろう。

こうした先の見えない状況があるからか、私の質問箱やツイッターのDMでも鉄道会社の社員の方から、転職したいがどうすればよいのか、○○という企業に興味があるがどういった雰囲気や給料なのか、転職したいがどういった企業が良いのか、等というような質問がだいぶ増えてきたように見える。

私自身がいた業界・会社や、知人がいる業界・会社であれば、お答えすることは出来るが、正直個別の話になってくると限度がある。

そのため、今回は、転職活動はどうすればよいのか、また企業の評判を調べるにはどうすればよいのかについてお話ししようと思う。

転職活動はどうやればよいのか

これに関しては、前の記事でも書いたので今回は詳しくは書かない。

基本的には、転職エージェントに登録し、そこで条件に合った求人を検索し、職務経歴書や履歴書を企業へ応募し、面接をしていくという流れだ。

マイナビやリクナビ、dodaやtype等の大手が基本だろう。
(※マイナビのプロモーションを含みます。)

登録自体は無料だし、登録したからと言って転職活動を始めないといけないわけではないので、求職者にはデメリットは全くない。本当に行きたい会社が見つかれば、本格的に転職活動を始めればよいだろう。

企業をどうやって選べばよいのか

転職先(新卒の場合は就職先)を選ぶ際に気になるのが、企業の評判だろう

表に出ている給料は本当なのか、自分が入るとしたらどのくらい貰えるのか、転勤や配属はどの程度あるのか、職場の雰囲気はどうなのか、どのようにキャリアアップできるのか、離職率はどの程度なのか、福利厚生はどうなっているのか等々、悩みは尽きない。

都合の良い情報は、企業側も求職者の惹きつけに使うので表に出てくるのだが、都合の悪い情報は正直出てこない

そして、得てして本当に求職者が知りたい情報は、都合が悪い情報だったりするので、本当に知りたい情報は得られない。

オーソドックスな方法としては、その会社に勤めている知人・友人を見つけて、話を聞くことが良いだろう。気軽にできるし、親しければ本音を聞くことが出来るかもしれない。

ただし、その業界・会社に知人がいることはかなり少ないし、意外と自分のいる部署以外のことは知らなかったりするので、意外と情報収集には向いていない。

そこで有効なのが、「転職口コミサイト」である。

何かわからない人もいるかもしれないが、要するに「企業の食べログ」であるその会社にいる人・いた人が、率直な年収や勤務時間、キャリアアップや働き方等を書き込んで、評価を行うのである。

有名どころだと、「転職会議」「Openwork(旧Vorkers)」がある。

例えば、大手の口コミサイトである「転職会議」だと、こんな感じだ。(グーグルの企業評価を見た場合の画面イメージ)

年収ややりがい、将来性やスキルアップ等、かなり細かく書かれており、大手の企業ならば口コミ数も多いので、得たい情報は概ね得られるだろう。

使い方は簡単で、メールアドレスで会員登録を行うだけだ。ただし、全ての口コミを見るためには、①有料の会員プランを申し込む(月1,000円程度)、②自分自身も企業の口コミを記載する必要がある

②については、今いる企業のことを書けばよいので、比較的気軽にできるためオススメだ。自分のいる企業の情報を発信することで、他の企業の情報も得られるという、ギブアンドテイクのやり方なので、フェアーだろう。

仮に、身バレのリスクを恐れて有料プランに申し込むとしても、せいぜい月1,000円程度なので、大した出費ではない。むしろ、全く情報のない状態で転職してしまい、新たに入った会社でも想定外のことが起こってまた転職をしてしまうというリスクに比べれば、安いものだ

加えて、企業の面接のプロセスや聞かれる内容についての口コミがあることもポイントである。転職活動は緊張の連続だが、予め選考の大筋をつかんでおけば、変に緊張しすぎることもないだろう。

私自身も、転職活動するときはこれらの口コミサイトを活用し、受けている企業の情報を収集していた。エージェントからもある程度企業の情報は得られるのだが、転職エージェントはあくまで”企業側の代理人”で、企業側から金を貰っているので、内定が出そうな所について、我々の不利益になる情報は出してこないことが多い。実際、私が内定が出そうになった企業について、口コミサイトで調べたところ、実はエージェントが提示している給料は様々な条件が重なった時にしか出ない手当を含む額であり、実際は大幅に年収が下がる可能性があるという事もあったので、ダブルチェックは必須だろう。

また、転職だけでなく、新卒の学生にもこれらの転職口コミサイトはおススメだ。新卒採用の場合、社会人経験がないので中途以上に何を見ればよいか見当もつかないだろう。また、リクルート等が、企業から莫大な金を貰って、”夢のある社会人生活”を動画やパンフでアピールしてくる。なので、冷静に企業を判断するために、どういった部分に注目すればよいか、こうした口コミサイトを参考にするとよいだろう

コロナ禍で、鉄道会社等の大手企業ですら先行きが不透明な時代、しっかりと自分自身で情報収集を行っていくことが、良い社会人人生を送るうえでは最も重要だ。

皆さんの検討を祈ります。

地方配属総合職の家計簿

総合職の収支

鉄道会社の給料は、総合職といえども決して高くなくまったり高給というのは幻想であるが、福利厚生は比較的充実している、ということはこれまでも書いてきた。

今回は、私やその周りの人の給与明細や家計簿をもとに、具体的な月の収支のイメージを紹介したいと思う。JR各社の採用HPには初任給が書かれているが、その会社の中で最も手当が高い数値となっているので、あまり参考にはならない。そのため、地方配属になった場合のリアルな数値を今回は紹介しよう。

一応、以下のように前提はおいてあるので、会社の違いや個別の事情を考える場合、適当に足したり引いたりしてみるとよいだろう。

  • 基本給20万円(JR東日本をイメージ、大卒総合職3年目、院卒総合職1年目くらい)
  • 地方配属(都市手当4%)
  • 残業15~20時間程度(ちょっと忙しいくらい)
  • 独身・寮住まい
  • 財形貯蓄や社員持株会など会社関係の制度の利用はなし
  • 保険は健康保険・雇用保険・年金等、国の制度のみ。生命保険等の民間への加入はなし
  • 車もなし

特定を避けるため数字はある程度丸めているが、一般的な大卒で地方配属になった総合職の月収支としては、大きくは間違っていないと思う。JR東海はこれに収入がプラス2~3万くらい、JR西日本はちょいマイナスくらい、JR北海道・JR四国・JR九州はマイナス1万円くらいを想定してもらえば大体あっているのではないだろうか。

会社の寮に住んでいる場合、住宅費(寮費と光熱費含む共益費)は給料から天引きされるので、大体手取りは15万~16万円となる。

朝晩の食事は寮の食堂で済ませており、大体朝300円、夜500円くらいで食べることができた。また昼も職場の仕出し弁当やスーパーの安売り弁当を食べており、大体500円もかからなかったため、食費は3万円と外食中心にしてはかなり抑えられている

雑費には衣服や消耗品が含まれているが、これも業務スーパーやユニクロなどで結構安めのものをひたすら買っていた。あとは細かい交通費とかもここに含んでいる。

娯楽には、同期などとの飲み会、レジャーや書籍、DVDレンタルやカフェ等すべて含んでいるが、まあ割と抑えていた方かもしれない。飲みに行くときもクーポンを使ったり、なるべく安い店を探したり等、かなり気を使っていたと思う。職場関係の飲み会はそういった裁量が効かないので、何ともできなかったが。。。

これで大体月4~5万円くらいは残っていたので、貯金と投資に回していた。ネット証券で口座を開いて、安い株を買ったり、投資信託を買ってみたりしていた。

このように、無駄遣いを避けるように気を付けていれば、意外と金は貯まると思う。

コンビニには行かなかったし、服や靴もブランド品は全く買わなかった。交通費も社員用のパスがあるため、事業エリア内なら半額以下で旅行に行けるし、系列のホテルに泊まれば割引も受けられる。行先は限られるし、型にはまった生活にはなるが、それでも良ければ悪くはない生活だろう。

ただ、ものすごく金が溜まるわけではないので、好きなように趣味に使ったり、結婚式が重なったりすると、たちまち生活は苦しくなる。また、早く結婚して子供が生まれたり、車や家を買ったりするとさらに生活は厳しくなるはずだ。

なんとなく生活は想像できただろうか。これから鉄道会社に入社する人、今若手の社員の人の参考になると嬉しい。

転職活動を始めてみよう

新型コロナウイルスの終息も見えず、お盆の帰省自粛や旅行自粛が叫ばれており、今年のお盆は例年とは全く異なる状況になりそうだ。

JR各社の4-6月決算も軒並み悪く、繁忙期であるお盆の予約も例年と比較し大幅に減少している。当分鉄道業界の業績回復は難しいだろう

JR東日本、過去最大の1553億円最終赤字 4~6月
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62083460Q0A730C2I00000/

JR東海、初の営業赤字 新幹線利用84%減 4~6月
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62136050R30C20A7I00000/

JR西日本の20年4~6月、過去最大767億円の最終赤字
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62136010R30C20A7000000/

このような状況で夏季休暇に入っている人達も多いだろう。鉄道会社の現業で働く方たちは関係ない話だが…旅行も帰省も出来ないため、実に面白くない夏休みだと感じている人も多いと思う。

しかし、逆に家でしっかりと将来のキャリアを考える時間が出来たと考えるのはどうだろうか。鉄道会社に限らず、将来のキャリアに悩んでおり、今夏季休暇で暇を持て余している人には、まず転職活動を始めてみることをお勧めする

転職エージェントにまずは登録

転職活動を始めるといっても、いきなり面接を受けろ、と言っているわけではない。まず転職エージェントに登録して、エージェントと面談をしてみよう

今ならコロナ対策のため、zoom等のビデオ会議で簡単に相談に乗ってもらえるので、地方に配属されている人も気軽に情報収集が可能だ。

簡単でもよいので履歴書を書き、転職サービスに登録することで、エージェントと面談し情報を得ることができる。

情報収集であれば、会社四季報や行きたい会社のHPを見たり、働いている友人・知人に当たればよいと思う人も多いかもしれない。

ただ、エージェントと面談すると、以下のような、よりリアルで最新の情報を多く得ることができる
・今の転職市場の動向(採用が活発になっているか、そうでないか)はどうなっているか
・現在の職歴・学歴からどういった業界・会社の選択肢があるのか
・どれくらいの年収が見込めるのか(自身の市場価値はどの程度か)
・どういったスキルを身に付けると転職に有利か、等

こういった、転職に不可欠な情報を無料で手に入れることが出来る。せっかく時間があるのだ。やらない手はないと思う。

お勧めの転職エージェント

私が転職活動時に主に使っていたのは、マイナビだった。

求人数が割と多く、幅広い選択を示してくれるエージェントが担当だった。書類で相当落ちたが、どんどん新たな企業を紹介してくれるので、大変助かった覚えがある。
(※マイナビのプロモーションを含みます。)

ただ、これも会社というより、付くエージェント次第といった所もあるので、マイナビ以外にも広く登録することをお勧めする。

また、鉄道会社の総合職で入れるほど学歴が高い人には、JACもおススメである。こちらは外資金融や外資コンサル、新進気鋭のベンチャーなどハイクラスな求人が揃っている。

東大京大や早慶などの高学歴で、地頭に自信がある若手の総合職の人は、そういった実力主義の世界に挑戦してみるのも一つの選択肢だろう

ちなみに、こういったハイクラス転職エージェントに登録しておくと、ハイクラス企業の中途向けセミナーや説明会の案内も回ってくる。本格的に転職活動を始めなくても、少し違う業界の人たちの話を聞いて刺激を受けてみるのも良いと思う。

まとめ

今年はコロナの影響で、例年とは全く異なる夏になりそうだ。そして定年まで安定と思われた鉄道業界にも、これまでは考えられなかった強い逆風が吹いている。

鉄道会社に限らず、将来に少し迷い始めた人は、コロナで外出や帰省が出来ないこの時間を有効に使い、最初の情報収集を始めてみることをお勧めする。

鉄道会社の新入社員・就職希望者におススメの本

以前一度、鉄道会社の内定者や新入社員、就職希望者向けにおすすめの書籍を紹介した。

今年はコロナにより大学の授業開始が遅れたり、外出自粛により自宅で暇を持て余している人も多いだろう。

Twitterでは内々定者向けにお勧めの本を紹介してほしいとの質問もあった。

内々定者や鉄道業界志望者向けに、鉄道会社の実態を知られるような本を紹介したい。読みやすい本から読み応えのある本まで様々だが、どれも暇つぶしと会社理解の参考になると思う。これを機会に読んでみてはいかがだろうか。

組合関係の勉強

まずは鉄道会社の組合について詳しく書かれた本を紹介しよう。主にはJR東日本の最大組合だったJR総連系の東労組についての本になる。

今は社友会という組織が会社と手を組んでいるが、それまでは「革マル」とった過激派左翼集団が浸透していた組合と手を組んでいた。世界最大の鉄道会社であり、経済の中心である首都圏の輸送を担っていたJR東日本に過激な組織が浸透していたとは、にわかには信じられない話である。

このような異常な状況になってしまった経緯や、東労組の実態について詳細な調査に基づいて書かれた本が以下の3冊である。

異様としか言いようがない歪んだ労使関係、他労組に所属する同期と出掛けただけで執拗に嫌がらせをされるほどの排他性、監視の目がないのをいいことに莫大な組合費を好きなだけ使うまるで独裁国家の支配者のような組合幹部、etc…

JR東日本にとっては少し前の話だが、JR北海道はまだまだ続いている話である。平成の世も過ぎ、民営化から30年以上も経過したのにもかかわらず。

JR本州三社の関係性(国鉄改革から現在に至るまで)

次に質問でも良く来るのが、JR東日本とJR東海の比較である。

この2社はお互い首都圏の鉄道と、東海道新幹線という巨大な輸送網を持っており、互いに日本一の鉄道会社という自負があるためか、ライバル心が強い。

外から見ても、お互いが反目し合っているのがわかるのか、JR東日本とJR東海は仲が悪いのですか?といった質問はかなりくる。

現場社員間でいがみ合う事は少ないが、少なくとも幹部レベルではお互いを良く思っていないことは確かである。

最大の理由は、やはり組合問題である。様々な経緯があるためここでは詳細は書かないが、JR東日本は革マルが浸透していたJR総連系の組合、JR東海とJR西日本はそことは完全に手を切ったJR連合系の組合と手を結んでいる。

要は過激派に屈したJR東日本と、それに真っ向から対抗したJR東海・JR西日本の争いという事である。

またそれ以外にも、東海道新幹線品川駅建設に関する土地問題等、事あるごとに主導権争いをしてきた。

この辺りの詳しい内容が、実際に国鉄改革を主導しJR東海に長年君臨してきた名誉会長の葛西敬之氏によって書かれている。

JR東海に新入社員として就職する人は課題図書になっているため、 就職前から読んでおいても損はないだろう。

鉄道の安全・事故

鉄道会社で働くにあたり、絶対に損なっていけないのは安全である。

明治時代に日本最初の鉄道が開業して以来、数えきれないほどの鉄道事故と犠牲者によって今日の鉄道の安全は成立している。

大きな鉄道事故なんて、戦前や戦後のまだまだ日本の技術が未発達で物資も足りない頃に起こっていたんじゃないの?今どき事故なんて起こることないでしょ?と考えられていた時期に起こったのが、2005年4月25日に発生したJR西日本の福知山線脱線事故である。

107名という多大な犠牲者を生んだこの事故は、鉄道事故は技術的面だけではなく、組織的な原因によっても引き起こされるという教訓を与えた。

確かに技術は発達したが、それを使う人間がちゃんとしていなければ、全く意味がないのである。

おそらくどこの鉄道会社に就職することになっても、最初に頭に叩き込まれるのは「安全第一」の思想である。

過去に起こった鉄道事故を学ぶ機会も多いだろう。会社によっては事故についての展示をわざわざ設けている所もあるし、実際の事故現場に社員を派遣することでその凄惨さを目の当たりにさせる所もある。

鉄道会社への就職を志望する人は、鉄道の安全の裏側には多大なる犠牲があり、自身が一歩間違えれば悲惨な事故を起こしてしまうという、責任重大な仕事であることを認識した方が良いだろう。

入社前から、または入社してすぐにでも事故の歴史を学ぶことは重要だ。

鉄道会社の関連事業

鉄道会社は鉄道だけではなく、不動産やホテル・商業施設・娯楽施設等多岐にわたる。

JR各社は国鉄民営化によって関連事業の制限が解かれ、様々な事業を手掛けるようになった。会社によってその真剣度合いに差はだいぶあるが、本州JRは本業の鉄道事業で多額の利益を稼ぐことが出来るため、関連事業はどうしても後回しになりやすい。

近年多少は変わってきたものの、鉄道会社内において関連事業は傍流である。民営化当初、余剰人員の姥捨て山とみなされており、そこで働く社員のモチベーションも低かった。

しかしJR九州はそうではなく、本気で鉄道一辺倒の会社から脱出しようともがいていた。当時新幹線はもちろんなく、山手線のような収益路線もほとんどない。国からは「三島会社」として実質見捨てられたような状況で、経営の自立などは夢のまた夢だった。

しかし2016年には念願の株式上場を果たし、完全民営化することが出来た。

事業環境の違いはあるものの、同じような状況だったJR北海道やJR四国とは大きな違いである。

JR九州の努力や苦悩等がわかりやすく示された書籍である。読みやすいので、一気に読めると思う。JRの中では一番「経営」をやっている会社だと、個人的には考えている。

たくさん紹介したが、是非GWの共に読んでみてほしい。

鉄道会社の組合はどんなもの?その4(どの組合に入ればよいか)

以前から鉄道会社の労働組合については色々と記事を書いてきた。

大きく内容をまとめると、①鉄道会社への就職=労働組合への加盟(第一組合員に非ざれば人に非ず)、②組合活動は政治活動(団結ガンバロー)、③労働組合は巨大集金装置、である。

2020年5月現在、今年入社した新入社員の方々はもう組合への勧誘が本格化してきた頃だろうか。あるいはもう既に組合加盟の手続きをしてしまった後だろうか。

結論から言ってしまうと、鉄道会社に就職するにあたって組合に入らないという選択肢はない。ただし、入る組合を間違ってはいけない。会社と手を握っている組合に入らなければ、鉄道人生はそこで終了である。

今回はJR本州各社において、どの組合に入ればよいかをそれぞれ紹介しよう。

JR東日本:社友会

JR東日本に就職した場合、厳密に言えば組合に加盟する必要はない。これはJR各社の中でも異例の存在である。

しかし組合の代わりに、「社友会」という組織があり、組合ではなくここに加盟する必要がある。

元々は、東労組(東日本旅客鉄道労働組合)・国労東日本(国鉄労働組合東日本本部)・東日本ユニオン(JR東日本労働組合)など計8つの組合が存在した。(同じ会社に8つも組合があること自体意味が分からないのだが…)

が、さらにそれも分割し、現在は11の組合が存在している

出所:東日本旅客鉄道株式会社IR資料

このうち、東労組(とうろうそ、と読む)というJR総連系の組合が最大勢力で、会社側ともべったり組んでおり、この組合に入っていなければ人に非ずといった権力を誇っていた。

この辺りの経緯は書くと長くなるので別の記事で紹介しようと思う。

しかし、2018年に東労組が計画したストライキが失敗したことを発端に、この最大組合は分裂した。この辺りの経緯は、「JR東日本 ストライキ 失敗 分裂」等でググってみれば詳しく出てくるだろう。

要するに、過激な行動を起こして”古き良き”労働運動というものをやりたがった組合幹部に、大半の若手組合員がついていけず大量に脱退したということだ。

5万人近くもいた組合員が、現在は1万人を切っている。大幅な脱退だ。

東労組と内心手を切りたがっていた会社の人事労務系の勢力が背後で糸を引いていたという話もあるが、おそらくは今の2~30代の社員にとって、馬鹿げた権力闘争や労働運動等は時代錯誤であり、加齢臭がする労働組合に付き合ってられないという空気が大きかったと思われる。

この最大勢力の東労組が無くなった受け皿として、会社側が用意した団体が「社友会」である。東労組程の組織ではないが、会社側が手を組んでいる組織なので入るよう誘導されるだろう。特に総合職は下手に自分で考えて組合を選ぶのではなく、会社と手を結んでいる団体に入らなければ永遠に出世の芽は無くなるので気を付けよう。

JR東海:JR東海ユニオン

JR東海に就職した場合、JR東海ユニオンへの加盟が必要だ。

JR東海には、JR東海ユニオン(東海旅客鉄道労働組合)、国労東海(国鉄労働組合東海本部)、JR東海労(ジェイアール東海労働組合)、建交労東海(全日本建設交運一般労働組合東海鉄道本部)の4つの組合が存在する。

出所:東海旅客鉄道株式会社IR資料

最大勢力はJR東海ユニオンであり、ここが会社と手を組んでいる組合となる。

入社した人はここ以外の組合に入ることは許されない。というか、JR東海の場合は他労組が新入社員を加盟させる隙を作らない。研修期間中は他労組の社員が新入社員と接点を持つことはないし、現場配属後も徹底的に監視される。

よほど会社に不満があり、自ら他労組に加盟を申し出ない限りはほぼ確実に他労組に加盟することはないだろう。

こういった徹底した労組対策が功を奏し、JR東海の労働組合は比較的安定している。約95%がJR東海ユニオンであり、他労組の高齢化は著しい

その余裕からか、少数組合に対する表立った弾圧もそこまで見られない。また組合活動もそこまで政治的な色は強くない。どちらかといえば、団結を深めるための軍隊的な行動が多い印象がある。

他労組の定年退職が進み次第、単一組合へと収束していくのではないだろうか

こういった環境のため、他労組に入った瞬間に干されることは確定である。普通に勧誘されるままにJR東海ユニオンに入るのが安定した鉄道人生を送るために必須である。

JR西日本:JR西労組

JR西日本に就職した場合は、JR西労組(にしろうそ、と読む)への加盟が必要である。

JR西日本には5つの組合がある。JR西労組(西日本旅客鉄道労働組合)、国労西日本(国鉄労働組合西日本支部)、JR西労(ジェーアール西日本労働組合)、建交労西日本鉄道本部( 日本建設交運一般労働組合西日本鉄道本部)、動労西日本(国鉄西日本動力車労働組合)である。

出所:西日本旅客鉄道株式会社IR資料

このうち最大勢力はJR西労組であり、会社と手を組んでいる。

JR連合というJR東海と同じ上部組織を持つ組織であり、その成り立ちも含めJR東海の労働組合と雰囲気は似ている。

入社するとここ以外の組合に加盟することが許されないのはJR東海と同じである。また、JR西労組の組織率は95%程度と非常に高くなっており、JR西日本も単一組合へといずれは収束していくだろう。

ただし、JR西日本はJR東海ほど労組対策は徹底されておらず、他労組も比較的自由に動けている(といってもそこまで積極的なわけではないが)。

これには理由があり、JR西日本は他労組(JR西労)の運転士を自殺に追い込んでいる。詳しくは書かないが、労組が異なるという理由で日勤教育をはじめとした不当な待遇を受け続けた結果、ある運転士が自殺したという事件である。裁判にもなったが、会社側の責任は問われていない。

また、福知山線脱線事故の影響も大きいだろう。あまり監視を強めすぎると、社員が暴走して重大事故につながりかねないという認識が会社にもあるのではないだろうか。

いずれにせよ、JR西日本も最大労組であるJR西労組に加盟するしか選択肢はない。ここもJR東海と同じく政治色が強い過激な組織というわけではないので、まだマシだろう。

まとめ:最大組合に入るしか選択肢はない

ここまでJR本州三社の組合事情について書いてきたが、これはJR北海道やJR四国、JR九州、JR貨物においても同様だ

それぞれ最大勢力の毛色は違うにせよ、第一組合に入らなければまっとうな鉄道人生は歩めない。会社に不満があるからといって、下手に感化され勢いだけで組合を移ることは決してしてはならない。

会社側の意向をよく見極め、どの組合が力を持っており、出世につながるかを見極めることが重要だ。

しかし、冷静に考えてみれば同じ会社内に複数組合が存在し、事業で他社と競争するのではなく、社内で組合同士でいがみ合うというのもおかしな話だ。

特に、JR東日本の組合事情は現在かなり入り乱れている。東労組の分裂から2年経ち、分裂した組合が更に分裂を繰り返すなど、内ゲバばかり繰り返している

くだらない権力闘争に巻き込まれたい人なんて皆無だろうが、鉄道会社に就職した以上どうしてもどこかで組合と関わらざるを得ない。自分の利得のみを考えて生きていくことがベストだが、職場の人間関係等色々なしがらみから、中々そうはいかないことも事実だ。

また、鉄道会社に総合職として就職した人は、組合こそが会社の主要な業務だという事を認識する必要がある。鉄道事業の海外展開や関連事業の開発、輸送の未来を考える等、大きな夢を持っている人が大半だろう。

しかし現実は、時間の無駄にしか思えない調整業務や組合との折衝だ。自分の所属する組合だけでなく、各組合の動向は嫌でも学ばなければならないし、いずれ管理職になってくると各組合とのつながりは避けられない。くだらない内容がほとんどで時間の無駄に思えることばかりだろうが、鉄道会社イコール組合である。組合対策をやって給料をもらっているといっても過言ではない。

総合職・現業職関係なしに組合は絶対に避けられない。旧態依然とした組織ではあるが、それが鉄道業界の「常識」なのである。世間と同じ感覚を持っていては務まらない仕事である。

それを認識したうえで、皆さんもうまく会社・組合と付き合っていってほしい。

鉄道会社のインターンで実態はわかるのか?

このブログは外からはわからない鉄道会社の実態を伝えることを目的としたブログだが、インターンに行けば実態がわかるのでは?という意見もよく聞く。

確かに最近はJR・私鉄共にインターンをやる会社が多く、学生の業界理解の助けになっていることは間違いないだろう。

しかしインターンは所詮はインターン。今回はインターンではどのような事をやって、それが実態とはどう違うかを紹介しよう。

1.傍からみるとかなり本格的

多くの鉄道会社が「業務理解を深めてほしい」「会社で働くイメージを持ってもらう」「より実際の業務に近いことを体験し志望度を上げてもらう」等と称してインターンをやっている。

今回は代表例として、JR東日本とJR東海の最新のインターンシップ内容を見てみよう。

JR東日本だと大きくはビジネスマネジメント(事務系)とテクニカルマネジメント(技術系)の2つ、JR東海だと事務・運輸・施設・車両・電気の5種類と採用系統と同じくくりになっている。

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運転士になるには?その1 -意外と長い道のり-

どんな人も子供の頃、電車の運転士に憧れたことはあるだろう。特に男の子であれば一度はなりたいと思うに違いない。
実際、将来就きたい職業ランキングでは10位以内に入っている。

また、なってみれば(あくまで今のところだが、)意外と給料も悪くはない。

では、電車の運転士になるにはどうすればよいのだろうか。
今回は一人の運転士として、列車を動かすまでにどのような過程を踏めばよいのかを紹介してみる。

1.鉄道会社に就職する

運転士は国家資格

運転士は国家資格であるため、実際の路線で列車を運転するためには、国土交通省の地方運輸局が発行する免許が必要になる

自動車を運転するためには、教習所に通い、試験を受けて免許を取得するのと同じである。

運転士の免許は動力車操縦者免許と呼ばれ、国土交通省が指定する養成所で指定の教育を受けた後に、実習を行うことで取得できる。

注:これは動力車操縦者免許ではありません

国土交通省が指定する養成所は、鉄道会社の研修施設内にあるため、まずは鉄道会社に就職することが第1歩である。地方の規模が小さい私鉄だと、自社で養成せずに大手の鉄道会社に研修を委託している場合もある。

また国家資格であるため、鉄道会社に就職せずとも独学で勉強を行い、試験に通ることで免許を取得することも、理屈上では可能であるが、机上教育ならまだしも、実際の路線上で練習をすることが出来ないため、現実的には不可能であり、費用も莫大となるためこれまで個人で取得した事例は筆者は聞いたことがない。はっきりはしないが、現在は法的にも鉄道事業者に所属しなければ取得不可と変わったかもしれない。

自動車でいえば教習所に通わず、免許センターへ直接試験を受けるようなものだろうか。しかし鉄道の場合はよりハードルが高いだろう。

1人の運転士を養成するのに1,000万円?

ある鉄道会社が少し前に、自費での運転士養成を募集し、実際に数名が運転士となったが、数百万円もの自己負担があったようだ。

筆者自身も社内で、運転士を一人養成するためには1000万円近くの金がかかっている、という言葉を聞いたこともある。

のちに詳しく述べるが、訓練期間中は単に座学を受けているだけだったり、実際の路線を運転していても、指導役が横についている。事故や異常時の訓練のための運転シミュレーターも莫大な費用が掛かる。人件費や教材費を合わせると、そんなもんだろう。

このように運転士を一人養成するためには、莫大な時間と金がかかるため、個人では到底不可能である。

入社後の配属を勝ち取れ

話が逸れてしまったが、運転士になるためには、とにかく鉄道会社に就職する必要があるという事だ。

しかし、入社したからといって安心はできない。まずは配属というハードルをクリアする必要がある

鉄道会社は駅、輸送、保線、電力、車両など様々な系統ごとに採用を行っており、入社後すぐに系統が決められるが、最初に入った系統から異動することはほぼ確実に無い。このため運転士になるためには、まず輸送系など運転士に関係のある系統に配属されなければならない。これが第1のハードルである。

運転士になりたい人が、入社後の配属で輸送系の部門に配属されず、何度か上司に相談したものの結局異動もかなわず辞めてしまったこともあるようだ。

とにかく、入社前から輸送系の職種を志望しておき、面接や配属の面談でもそれを言い続けるのが良いだろう。

2.駅員・車掌になる

さて、運良く輸送系の部門に配属されたとしても、いきなり運転士の養成コースに入ることは出来ない。

駅員→車掌をまずは経験

会社によっても異なるが、基本的に駅員→車掌というように段階を経ていき、各段階で少なくとも2年程度は経験を積ませるため、高校を卒業して18歳ですぐに入社し、最短でステップを踏んでも養成コースに入るためには23~4歳になっている。

駅員や車掌は運転士に向けた一つのステップに過ぎないと思う方もいるだろう。

しかし車掌になるためにも社内の筆記試験や面接試験があり、遅刻歴がないか、ひどいミスをしていないか、接客態度に問題はないかといった、普段の勤務態度を勘案したうえで試験の合否が決められる。

遅刻があったり、勤務態度が悪いとその時点で乗務員としての適性がないとみなされ、試験を受けることすら出来ないから要注意だ。

ほぼ対策できない適性検査

また車掌を含め乗務員になるためには、医学適性検査や運転適性検査といった検査も通過する必要がある。

医学適性検査の細かい内容は会社ごとに異なるが、視力や聴力、色覚、遠近感や睡眠状態、果ては脳波まで細かく検査される場合もある。これらは生理的なものだし、訓練してどうにかなるものではない。

運転適性検査は、クレペリンという瞬時の判断力や作業の正確性を見る検査であり、検索をしてもらえば詳細はわかると思うが、非常に精神を消耗する検査である。

これらの検査の合格基準は知らされておらず、これといった対策を立てることは困難だ。

稀に、これらの検査を通過することが出来ずに、乗務員を諦める人もいることもある。

3.運転士養成コースに入る

まずは運転士コースの登用試験

車掌を数年経験した後、特に問題なく業務をこなしており、上長からの推薦があれば運転士養成コースに入るための試験を受けることになる。

この試験も車掌と同様に、筆記試験や面接試験があり、社内通信研修の受講なども必要となる。普段の勤務態度や遅刻歴が重視されることは言うまでもない。

ちなみに、JR東日本は車掌・運転士の登用試験を来年にはなくすので、試験についてはハードルが無くなる。

運転士と車掌の名称廃止へ JR東日本、登用試験もなくす(共同通信)

10回近くこの試験を受験したにもかかわらず、特に目立った理由もないのに落とされている人もおり、俺は諦めて車掌を続けるよ、といった人もいる

また、車掌になるときと同様に、ここでも適性検査を受けさせられる。車掌の時よりも基準が厳しい場合があり、運転士になるために会社に入ったにもかかわらず、適性検査に合格することが出来ず、会社を辞めていった人もいる

合格しても先輩の順番待ち

養成コースに合格したとしても、要員の都合上すぐに研修施設に入れるわけではなく、長ければ1年以上待たされることもある

試験に合格して喜んだものの、結局今までと同じ仕事を1年近く続けており、結局なんだったんだ。。。?と思うこともあるだろう。

関門はまだまだ続く

ここまで書いたように、運転士になるためには時間もかかるし、それなりのハードルを越えてこなければならない。

しかし、ここまで書いたのは、養成コースに入るまでの過程であって、コースに入ったからといって必ずしも全員が運転士になれるわけではない

次は、机上研修と、最もハードルが高い実地研修について書いていこうと思う。

鉄道会社の福利厚生 -電車は乗り放題?-

これまで、このブログやTwitterでは、鉄道会社はまったり高給ではない事を話してきた。マイナスな面がやや強調され過ぎたきらいもあるため、メリットも紹介しておこう。

確かに、総合職で入社したとしても思っているほど給料は高くない。しかし、福利厚生は充実しており、生活に困るという事はない。今回は、制度としてある福利厚生と、それ以外の生活上のメリットについて紹介してみよう。

制度としての福利厚生 -寮や社宅、家賃補助など-

制度のメリット

公式な福利厚生で最大なのは、やはり住宅関係だろう。

鉄道会社は転勤が多いが、基本的にどこに配属になっても寮が完備されており、安価に住むことが出来る。また、家さがしに時間を割かれることもない。意外と家さがしは面倒だし、敷金や礼金が必要で家具類もそろえなければならない等、出費が大きいが、これを避けることが出来る。

費用は、光熱費込みで月1万円程度。(最近は値上げしている所もあるらしいが、それでも普通に賃貸するより圧倒的に安価である)

しかも、食堂がついていることが多く、こちらも数百円でバランスの良い食事がとることが出来る。味に関して多くを求めなければ、問題ないだろう。

入社してすぐの手取りは、10万~15万円程度なので、住居費や食費がこの程度で住むことは大変ありがたい。

また、同期や先輩も同じ寮に住んでおり、プライベートを含めて懇親を深めることも可能だ。寮によっては、休日にイベントを開催することもあり、そういった集まりが好きな人は楽しいだろう。

結婚してからも社宅がある。社宅も月数万円程度で住むことが出来て、家計にやさしい。決して新しく綺麗なわけではないが、贅沢を言わなければ満足するレベルだ。

寮や社宅が嫌なのであれば、家賃補助制度もある。数万円を上限として、家賃の一定割合を支給するという制度だ。これなら、自分の好きなところに住むこともできる。

ただ、せいぜい3万円程度が上限であることが多いため、都会であればほぼ賃貸に住むことは不可能だろう。地方でもあまり良い所には住めないことが多い。

会社としては寮や社宅に住むのが基本で、家賃補助はあくまで補助的な制度というメッセージだろう。

制度のデメリット

良い事ばかりに見えるが、デメリットももちろんある。

寮は風呂やトイレ、洗面台が共有なことが多く、職場の先輩や上司に遭遇することも少なくない。プライベートを完全に切り分けたい人にはあまり良い環境とは言えない。寮のイベントも面倒な人にとっては厄介なだけだ。

寮によっては門限や規則が厳しいこともあり面倒だ。配属先が決まれば、寮は自動的に決まってしまうので、自分の入る寮が厳しくても逃れることは出来ない

また、部屋は狭く、少し物が増えてきただけで窮屈だ。隣の部屋の音が聞こえることもあり、落ち着かない事もある

鉄道会社の寮や社宅だからと言って、立地が必ずしも良いとは限らず、駅から徒歩20分という不便な場所にあることも珍しくない。

昔は駅周辺にあり、職場への徒歩通勤も余裕だったらしいが、駅周辺の土地は収益を生み出せるため、コストにしかならない社員寮や社宅は遠くへ追いやられてしまったという経緯があるようだ。

現場のローカルルールで、新入社員は始業時間の1~2時間前に出社しなければならないことも多いが、遠いと非常に不便である。

最後に、これはあってはならない事だが、盗難などの犯罪が起きることも多い。。。鉄道会社という多数の社員を抱えていると、中には不届きものもいるのだ。

しかも悪いことに、寮の管理側も事をうやむやにしてしまうこともままある。寮の管理人は会社のOBであることが多く、下手に問題が起こることで自身の責任問題になるような面倒は避けたいという気持ちが働くのだろう。

隠れた福利厚生

ここまで紹介した寮の制度や、それ以外の有給など意外に意外と大きいのが、自社線割引制度だ。

会社は福利厚生として認めていないが、かなり恩恵がある制度である。要するに、自社線であれば無料もしくは大幅な割引を受けられる

具体的には、乗車券はタダで、特急券等は半額やそれ以上、もしくはその近くまで割り引かれる。しかも本人だけではなく、その家族まで制度が適用されるため、旅行が好きな人や鉄道に乗ることが好きな人にとってはかなり美味しい。

例えば、新幹線を持っている会社の社員であれば、乗車券がタダなうえ特急券が半額になることもあるので、正規料金の大体1/4の料金で新幹線を使うことが出来る。これはかなり大きな福利厚生制度だ。交通費が浮くのはありがたいだろう。

よく、「鉄道会社の社員って、電車タダなんですか?」と聞かれるが、概ねそれは合っている。

ただ、これも未来永劫続くとは限らない。JRの場合、国鉄時代は特急列車等も含めてほぼ無料で鉄道に乗れていたらしい。しかも、私鉄との間にも協定を結んでいたこともあり、日本全国の鉄道、バス、ロープウェイ含めてタダで乗り放題だった時期もあるらしい。

しかし、それも今ではない。またJR貨物は少し前まではJR線全線が割引料金で乗れたが、今ではそういった割引は無くなっているようだ

まとめ

鉄道会社の福利厚生は、プライベートが確保できないなどのデメリットはあるものの、安い給料でも生活できる程度には充実している。

また、自社線に大幅な割引料金で乗ることが出来るため、旅行が好きだったり、ちょっと遠出して遊びに行きたい人や鉄道好きには美味しい制度もある。

こういった福利厚生制度がいつまで続くかわからないが、ほどほどの給与で福利厚生を最大限利用しながら生きていきたいなら、鉄道会社は良い会社と言えるだろう。

鉄道会社の給料 -実はおいしいのは運転士?-

前回の記事では、鉄道会社は世間で言われているような「まったり高給」ではない事を紹介した。

大企業だから高給だろうと入ってみると全くそうではない、入社前には会社からは決して話されることがない裏側について紹介した。

しかし、職種によっては色々な手当がつき、多少給料が良くなることもある。今回は、その中でも最も大きい、乗務員手当について紹介しよう。

「乗務員手当」はどう計算するのか

鉄道会社には様々な手当が存在するが、最も大きな手当は、運転士や車掌が乗務した時に支給される「乗務員手当」だ。

これは大まかに言えば、乗務時間と距離に応じて支給される手当であり、基本的には以下の式で計算される。

乗務員手当総額=①1か月あたりの乗務時間・距離 × ②時間・距離単価 

それぞれの項目についておそらく鉄道会社に勤めている人以外は聞きなれないと思うので、簡単に解説してみよう。

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鉄道会社の給料 -本当に「まったり高給」なのか?-

4月1日に鉄道会社に就職した新社会人の方は、そろそろ人生初の給料日が近付いてきたことだろう。既に給与明細が配られている人もいるかもしれない。

今回は、鉄道会社の若手の給料について、少し詳しく書いてみようと思う。

新社会人の人は、今後数年働く中でどれくらいの給料がもらえるか、またJR各社をはじめとした鉄道会社への就職を考えている人にも、会社選びの一つの軸として参考にしてほしい。

一般的に高給と思われている、鉄道会社(特にJR各社)の総合職の給与に注目して書いてみる。

鉄道会社は決してまったり高給の良い仕事ではない

学生をはじめとして、他の業界で働く社会人でも、鉄道会社は安定で高給、仕事はまったりというイメージを抱いている人は多いだろう。

結論から言ってしまえば、「まったり高給」というイメージは全く間違っていると言わざるをえない。

簡単に表すと、手取りは以下のような式であらわされる

手取り=基本給+各種手当(都市手当、超勤手当、特殊勤務手当、etc)ー各種控除(所得税、住民税、健康保険料、年金保険料、etc)

それでは、細かく見てみよう。

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