鉄道会社の配属先 その2

前回の記事では、鉄道会社に総合職として就職する際は広域の転勤や、誰も行きたがらないような過疎地域に配属になる可能性を覚悟する必要があると書いた。

今回は配属の重要性について更に深く考えてみたい。

長いと5~6年、縁のない地方に配属される

鉄道会社では一般的にどの会社にどんな系統で入社しても、最初の数年間は現場を経験することになる。この期間は会社や系統によって異なるが、長ければ5~6年は様々な現場を経験することになる。

総合職としての採用を大幅に増加させたことや、現場採用から管理職へステップアップするコースが整いだしたことから、管理職などのポストが人数に比べ減少したため、特に近年は現場期間が長くなっている。

この5~6年という現場経験の期間は、ずっと同じ職場に居るのではなく例えば駅員を2年、車掌を2年、指令を2年、といったように短い期間で様々な現場を異動することになる。総合職として入社しているので、自分の系統に関連する現場は一通り抑えておいた方が良い、といった考えに基づくのだろう。

この現場期間において広域の異動が行われることはほとんどない。というのも同じ地域で様々な現場業務を経験することで、色々な視点から鉄道のオペレーションを学ぶことが出来るからである。鉄道会社は巨大な組織であり、エリアごとの支社において、取り扱いや規則が異なることは珍しくないため、同じ場所で経験する方が混乱が少なくて済むのである。

つまり最初に配属になった地域で、最長で5~6年過ごすことを覚悟しなければならない。基本的に鉄道会社の総合職は新卒採用のみ行っているため、ほぼ100%新入社員は20代である。これが意味するのは、もし地方しかも過疎地域に配属になった場合、貴重な若い時間である20代の約半分を田舎で過ごすことになる。

配属先によっては人生が多きく変わる

20代は大きな人生の転換点である。晩婚化が進んでいるとはいえ、男性であれば27,8歳、女性であれば24,5歳あたりで結婚を考える人も少なくない。場合によっては子育てもあり得る。学生時代からのパートナーがいる場合でも、片方が地方に配属になり遠距離になってしまい、結果別れてしまうこともある。更に地方の場合、出会いを見つける可能性も低いため、人生設計に大きな修正が必要になることも珍しくない。

逆に地方配属になったため、新たな人間関係を見つけることも難しいため、既存のパートナーと早めに結婚してしまう、といった人も存在するが。

また学生時代までの人間関係を保つことが難しくなる可能性も高い。違う会社に就職した学生時代の同期と、週末にちょっと一杯飲みにいく、といった事も非常に難しくなる。計画を立てる必要があるため、気軽な付合いといったものは難しくなるだろう。入社後の少ない給料では、交通費もバカにならない。

縁のない地方に配属になった場合の過ごし方

全く縁のない地方に配属になった場合、必然的に会社の人間関係の比率が増していく。組合活動や若手のレクリエーションなど、暇をつぶそうと思えばいくらでもイベントは存在する。こういった行事に積極的に参加すれば、家族や友人がいない環境でも、孤独に苛まれることはない。

しかしプライベートと仕事をきっちりと分けたいという考えを持った人にとっては、交友関係のほとんどが会社関係であるといった事態は、到底受け入れがたいものであろう。

このような孤独に耐えられなかったり、鉄道会社の風土が合わず心を病んでしまう人も存在する。
地方に配属になると、仕事は辛くてもプライベートで家族や友人との時間を楽しむことにより気分転換を行い、仕事に折り合いをつけていく、といった当たり前のようなことが難しいのである。
地方出身の学生が都市圏に配属になっても同じことが言えるが、地方のような独特な人間関係や雰囲気は薄く刺激も多いため、確率は低い。

地方配属になると鉄道会社からの脱出は困難

いざ転職を考えても、地方において転職活動を行うことは非常に困難といえる。説明会や面接などは平日の夜に行われることがほとんどであり、開催場所も東京や大阪などの大都市圏が多い。

平日の業務が終わってからその足で面接に、といった事は出来ない。平日に休みをとり泊りがけを覚悟しての活動となるため、体力的にも金銭的にもハードなものになるだろう。

転職活動を本格的に行うのであれば、夜行バスやカプセルホテルを利用しなるべく費用を抑えながら、職場の人に怪しまれないレベルで休みを取りつつやるしかない。

転職エージェントが履歴書や職務経歴書の作成、スケジュール調整などを手伝ってくれるといっても、準備や面接本番は体力的にも精神的にも辛い。また、中々書類や面接を通過することが出来ず、長期間転職活動をしなければならない場合もある。都会に配属になれば簡単に見えることでも、地方に配属になると一気に難しくなるのだ。

つまり一度地方に配属になると、別のキャリアパスを考えることも難しくなってくる。

縁のない地域への配属はデメリットばかりか?

最近では地方においても街コンなど様々なイベントは開催されているし、趣味を作るなどして積極的に努力すれば、会社外のコミュニティを広げることも不可能ではない。またアウトドアなど、都会では体験しにくい経験も簡単に積むことが出来る。その地域が気に入ったため、別の場所に配属が決まっても、そこに家を建てて新幹線で通勤したり、単身赴任をしたりする人も存在する。

また地方配属であれば、それだけ配属される総合職の人数も少なく、出世競争のライバルになる存在が都市圏ほど存在しないという事も挙げられる。出世するためには昇進試験を受験する必要があるが、一定以上の階級になるとこの支社からは今年は何名、といったように人数制限がかかる。
このため必然的に都市圏に配属となった人は、受験の母数が多くなるため競争率が高くなる一方、地方配属の場合母数が少ないため試験に通りやすい、というような会社も存在するようだ。

仕事面についても、都市圏の現場は組織が大きいため、職場の全体像をつかみづらいという欠点がある。地方の現場だと、職場の人数もそれほど多くなく、組織も分化されていないため、様々な仕事を身近に見ることが出来、更に上司との距離も近くなるため、コネクションを作りやすいといった利点がある。

また組織のマネジメントを身近に見ることが出来るため、将来の勉強となることも挙げられる。もちろん小さな組織だからこその濃厚な人間関係であったり、独特な価値観は存在するが、そういったものに馴染めることが出来れば、仕事を勉強するという意味では良い環境と言えよう。

地方に配属になったら、組合活動や会社のレクリエーションに積極的に参加し、現場の人間関係にうまく馴染み、仕事に精を出す。こういった努力が出来るのであれば、鉄道会社で将来にわたりうまくやっていくことは難しくない。むしろ一生を鉄道会社に捧げようといった人にとっては、むしろ良い選択肢ではないかと思う。

まとめ:都市配属と地方配属のメリット、デメリット

以上を踏まえたうえで、都市圏、地方配属のそれぞれのメリット、デメリットをまとめてみよう。

1.都市圏配属
メリット
・刺激が多い
・会社以外にも様々な人間関係を構成しやすい
・会社の風土が合わなかった場合、別のキャリアを選択しやすい

デメリット
・出世競争は地方と比べると厳しめ
・仕事の全体像がつかみづらい

2.地方配属
メリット
・仕事の全体像がつかみやすい
・人数が少ないため、濃厚な社内の人間関係を構成することが出来る
・出世競争が都市圏と比べゆるい

デメリット
・仕事以外の人間関係が作り辛い。または消えやすい
・独特な風土になじめない可能性がある
・別のキャリアを選択することが難しい

いずれにせよ、鉄道会社に入った場合、海外に配属になる可能性はほとんどゼロに近いため、テロなどの恐怖に苛まれることもない。国内であればどういった配属先になっても構わない、海外にはいきたくない、といった人にはお勧めである。

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